市場を広げ、シェアを取る。社会を“より良く”するために、ラクスは次の挑戦に愚直に挑む

2000年、Googleが日本語での検索サービスを開始した年にスタートしたラクス。インターネットが爆発的に世界を覆う20年を駆け抜け、成長と変化を続けている。同社が力を入れるのは、競合が次々と生まれるクラウド型のバックオフィス支援サービスだ。アーリーアダプターへのサービス提供フェーズから、キャズムを超えてマジョリティへの普及に挑む意欲的な戦略とは何か。クラウド事業本部 楽楽精算事業統括部長の吉岡耕児に話を聞いた。


自社のサービスが社会をよくするという自信

── まずは、吉岡さんのキャリアについて教えてください。

新卒で入社したのは外資系の消費財のメーカーでした。最初の配属は営業で、その後は、営業企画、サプライチェーンマネジメントなどを経て、最終的にはブランドマーケティングや複数のブランドの統括などを任されていた。ゆくゆくは事業責任者や役員、経営陣といった事業横断的な役割を希望していたのですが、ポジションが上がるに従いCXOのような専門性を求められるようになりまして。自分のやりたいこととのズレを感じ転職を決意しました。

次に選んだのはスタートアップの立ち上げです。そのときちょうどタイミングよく起業する友人がおり、私も立ち上げに参加することになりました。いわゆるゼロイチのフェーズで、何もない状態。AIやデータサイエンスを社会に広める教育事業や、コンサルティングなどを展開し、私は経営陣として3年ほど在籍しました。

3社目に選んだのは、飲食店を全国展開している企業です。事業責任者のポジションで入社しましたが、すぐにコロナ禍に……。肝心の事業が厳しい状況になったことで、新規事業の開発責任者に異動となりました。しかし、それはあまり自分のやりたいことではない。再度転職を考えていたところ、事業統括部長というポジションを求めていたラクスと出会いました。「自分がやりたいこと」と「会社が必要なこと」がマッチしていると感じましたし、BtoBビジネスやIT領域など、2社目の経験があったことも大きかったです。

吉岡耕児(よしおか・こうじ)
クラウド事業本部 楽楽精算事業統括部長。食品業界グローバル最大手企業において、営業、SCMそしてブランドマーケティングと幅広い領域に従事。その後、スタートアップ企業を立ち上げ、経営陣の一角として事業戦略全般を担当し、ビジネスの拡大に貢献。大手外食チェーンにおける事業責任者を経て、2020年に株式会社ラクスに参画したのち、2021年10月より現職。

── 入社前と後で、ラクスへのイメージは変わりましたか。

ありがたいことに会社としてどんどん成長していますので、経営戦略や働く環境も日々フェーズが変わっていきます。しかし、会社としての芯は変わらないという印象です。その芯を作っているのは経営陣。特に素晴らしいと感じるのは、ラクスが定める11項目の「リーダーシッププリンシプル」を経営陣が真剣に体現しようとしていることです。これまで私が経験してきた4社の中でも、ラクスからは特に経営陣の愚直な意思を感じます。

ラクスは創業して約20年。これだけの規模の企業に成長させた今もなお、経営陣は情熱を持って働き続けています。なぜなら、ラクスのビジネスが日本や社会をより良くするという自信があるからです。そして、より良い未来のためには自分たちが舵取りをして、会社を成長させなければならないと強く信じてもいます。

経営陣は常に自身の成長へのモチベーションを高く維持しています。読書や学習はもちろん、人に会って話を聞くことにも積極的です。相手が自分より若い人であっても、その人から得るものがあるなら真剣に教えを請う。これは誰でもできることではないと思うんです。こうした姿勢に対する印象は、私が面接で話をさせていただいた時と実際に一緒に働いている今でも、ずっと変わることがありません。

アーリーアダプターの次の層に広げるために

── 創業した20年前と比べて、市場も業務領域も大きく変化していると思います。とくに昨今では、さまざまなBtoBのクラウドサービス企業が生まれていますが、改めてラクスの市場における立ち位置などを教えてください。

私たちが、他のSaaS企業と異なるのは、1つのプロダクトで上場できる規模のプロダクトを複数展開しつつ、これから成長していくようなアーリーステージのプロダクトなど、多くのSaaSプロダクトを展開していることです。急成長しているSaaS企業の中で、それぞれのサービスがさまざまな事業フェーズにあるのは稀有な存在だと思います。ラクスは過去3年間、目標通りCAGR30%の成長を達成してきました。この成長を牽引してきたのはクラウド型の経費精算システムの「楽楽精算」です。ただし、その成長を支えたのは、2001年に販売を開始したメール管理システムの「メールディーラー」でした。メールディーラーで得た原資を、楽楽精算に投資して成長してきた。今では楽楽精算によって、次の挑戦への原資が蓄積されてきています。それらを次のサービスへと投資している状態です。

ひとつの会社ですが、さまざまな事業フェーズがあり、それぞれのサービスの状況に応じてやるべきこと・やりたいことがまったく違うのが弊社のおもしろいところだと感じています。

── コロナ禍でDXの波は加速していますが、ラクスのサービスへのニーズも増えているのでしょうか。

もちろん多くの企業で、物理的な紙業務が残っていることでの非効率さにフォーカスが当たっています。紙のやりとりは不便ですし、紙を保管するスペースも整理する工数もかかる。ただし、楽楽精算に関して言えば、根本的な課題にもぶち当たりました。リモートワークが増え、対面での商談やお客様との会合などが減少したことで、これまで膨大にあった経費精算が減ってしまいました。それに伴い旅費交通費も交際費も発生しなくなったのです。これは私たちにとっても大きな変化でした。

──「このくらいの作業量になるなら、まだ紙のままでいいか」と考える企業もきっとありますよね。

そうなんです。ただ、我々のシステムで業務改善できる領域は、作業量を単純に減らすことだけではなく、経費を通した事業活動のリアルタイムでの見える化や内部統制の強化等幅広くあります。 そこでお客様の課題やニーズ、インサイトをよりあぶり出し、「単純な業務削減効果」以外の経費精算システムに期待されるものは何かを探る必要がありました。お客様とより深くコミュニケーションを取ることでわかってきたのは、紙業務が残っていることの影響は作業の非効率だけに留まらないということです。

と言うのも、営業も企画もリモートワークができるのに、経理だけはリモートワークに移行できないんです。つまり、紙業務の影響は、働き方にも直結しており、コロナ禍においては経営上の大きな課題になっていた。そこで私たちは「経理部だけ昭和編」というテレビコマーシャルを作ることにしました。これまで私たちは、紙作業の煩雑さとクラウドサービスを使うことで効率化できるというメッセージを発信してきましたが、さらに踏み込み、経理部だけが昭和に取り残されているという風刺的なメッセージを込めたんです。

「楽楽精算」経理部だけ昭和編(30秒)

また、コロナ課でDXへの機運は高まりましたが、まだまだ多くの企業では決済者であるベテラン層の「システムのイメージ」が更新されていないこともわかりました。いわゆるパッケージ型のソフトをイメージし、大きなサーバーを立てシステムを構築し、その後もメンテナンスコストが掛かり続けるという認識で止まっている方が思いの外多かったのです。そこで「部長の秘密編」というコマーシャルをつくりました。ITリテラシーの高くない部長でも安心して導入していいですよ、というメッセージです。

「楽楽精算」部長の秘密編(30秒)

── マス向けの広告を打っているんですね。

はい。現在、楽楽精算は、クラウド型の経費精算市場において累計導入社数が1位(*)で、多くの方に支持をしていただいています。しかし、ここからさらに成長させるには「市場自体を広げる」ことと「シェアを伸ばす」ことの両立が必要だと考えています。テレビコマーシャルもその戦略のひとつ。

これまでのお客様は、いわばアーリーアダプターなんです。経費精算に困っている経理部のみなさんが、自らさまざまなことを調べて、クラウドなら効率化できるとわかった。感度の高い方々ですから、私たちのサービスの強みを説明すれば、ご納得いただけるわけです。しかし、このフェーズはもう過ぎたと認識しています。

(*)デロイト トーマツ ミック経済研究所「電帳法対応進むクラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2021年6月号: https://mic-r.co.jp/micit/)より

── いわゆるキャズム超えて、アーリーマジョリティへとユーザーを広げていく必要がある、と。

そうなんです。そこで、他サービスよりも早くマスコミュニケーションに取り掛かり「クラウド型の経費精算といえば楽楽精算」というイメージを醸成していこうとした戦略のひとつがテレビコマーシャルでした。実際、クラウド型の経費精算における認知は楽楽精算がダントツでナンバーワン。また、顧客理解を深めた上でのメッセージ変更と戦略的な広告投資の強化によって、経理担当者における認知率は、ここ1年で10ポイントほど向上しています。

こうした外部環境へのアプローチに加えて、内部環境にも手を入れています。一言で言えばブランディングなのですが、デザインやトンマナの調整などのビジュアル面だけでなく、私たちがどんなバリューを提供すべきかを定め、メンバー一人ひとりのマインドセットを調整していこうとしているんです。

例えば「お客様の導入プロセスをストレスフリーにする」というのがあります。いくら導入や運用は簡単とは言え、始めてのことは大変です。営業のポジションが契約を取りたいからといって、ろくに説明をせずに「楽に導入できます」と伝えることはウソになりかねない。お客様に提供するのはストレスフリーな環境であると、チーム全体の認識を丁寧に合わせていくことで、営業からカスタマーサクセスまで統一感のある体験を提供できるのです。

アーリーアダプターへの認知のフェーズは終わった。他サービスよりも早くマスコミュニケーションに取り掛かり「クラウド型の経費精算といえば楽楽精算」というイメージを醸成していくタイミングがまさに今なのだ。

また「専門性」も私たちのバリューのひとつです。お客様の仕事への理解度や、困りごとの解像度を上げていくために、学習やお客様とのディスカッションを通じて学びを深めています。経理のプロフェッショナルであるお客様に貢献するには、私たちもプロフェッショナルにならねばなりません。

もうひとつ紹介したいのは「伴走役として寄り添いサポートし続ける」です。私たちの商材であるクラウド型のシステムは、永続的に使っていただくことに価値がある。長く使っていただくことで、お客様の業務がどんどん改善され、ゆくゆくは企業の健全化にもつながるわけですから。「よりよく、寄り添う 経費精算クラウド」というタグラインを使い、社内外の認識を合わせています。

私たちがどう役に立てて、その先にどんな未来が待っているかをお客様に納得いただく。こうしたステップを一つひとつ積み上げていく「愚直さ」は、経営陣だけでなく、メンバーも共通して持っていると感じます。ラクスのカルチャーと言えるかもしれません。

愚直さをアピールしすぎると真面目さが際立ちますが(笑)、もちろん柔軟な思考やチャレンジもたくさん求められます。同じことを繰り返していても成長はありませんから、日々、新しいアクションや試行錯誤する日々です。しかし、新しいことばかりに目を向けていると、統合が取れなくなる。お客様に説得力のある体験を提供するために、内部環境へのアプローチが必要なのです。

潤沢なリソースを活かし、思い切った挑戦を

── 事業の成長に伴い、採用の重要度も増しているかと思います。働き手として見たときに、ラクスの魅力はどこにありますか。

会社としてのフェーズが変わってきたことで、今までの成功モデルだけでは立ちゆかなくなっています。「新しいフェーズに向かって、どんどん挑戦できる環境がある」というのは、 一部の成長著しい企業と同じかもしれません。しかし、ラクスには、これまで会社が20年積み上げてきた実績とノウハウがあり、収益性の高い楽楽精算という主力商品があること。新しい挑戦をしていくために必要なリソースが非常に潤沢なのです。

私はこれまでたくさんの事業を見てきましたが、「やりたいことがあるのに、リソースがない」というもどかしさを何度も経験してきました。ラクスほどストレスなく新しいことに挑戦でき、その社会的な影響力も大きいという環境はそうそうないと思います。

社内にはさまざまな人がいますが、お客様や社会に貢献したいという気持ちが強い人が多いと感じています。そのためにも、自分の成長に貪欲な人も多い。一人ひとりがしっかり学びを深めて会社に還元し、お客様や社会にいいインパクトを与えていく。そういった方であれば活躍できるんじゃないかと思います。

大事なのは、チームへの貢献や会社の成長、社会への貢献に起点があること。もちろん「自分の出世のために頑張ります」という人がいてもいいんですが、それを言うだけのアウトプットがあること、アウトプットからのフィードバックをインプットに変換して成長していくことが必要です。

── メンバーのみなさんはどんなキャリアパスを歩んでいますか。

キャリア形成というと「一つの役割で経験を積みポジションを上げていく」か「とにかくなんでもやってみる」という2つの方向性が多いと思いますが、ラクスはそのどちらでもない。両方のいいとこ取りというイメージかもしれません。1つの軸をつくってそこからピボットして新しい挑戦をしていく。軸をつくってピボットして……を繰り返して成長していくんです。こういったキャリア形成は、これから自身のキャリアを形作っていく20代後半から30代にはとてもいい経験になると思います。

また、さまざまな領域の知識を求められる管理職にもやりがいのある環境です。課せられたミッションを十分に果たし、さらなる可能性を追求できる人材であれば、組織の規模や挑戦の幅を大きく広げていくことが可能です。

私自身がさまざまなキャリアを積んできましたから、こうしたキャリア形成を後押ししていきたいと思っています。ラクスは社員の多様な成長を実現する場を提供できる会社です。会社の制度として画一的なキャリアパスを押しつけることはないので、自分で顧客と向き合いながら、自分にぴったりなキャリアパスを掴み取っていってほしいです。

ラクスは今、大きな変化の時期を迎えています。これまでのメンバーでつくってきた領域を飛び越えて、外から入ってくる人が持っているナレッジや、今まで社内にいなかったからこそ担えるポジションを必要としている。もちろん、これまで築き上げてきたメンバーやノウハウへのリスペクトは前提ですが、新しく入ってくる人が抱く違和感からも課題を抽出し、一緒に次のフェーズに挑戦していきたいですね。

「お客様や社会に貢献したいという気持ちが強い人が多い」という吉岡の言葉に嘘偽りはない。新しいことに挑戦でき、社会的な影響力の大きさがラクスでの働きがい、そして会社の成長に直結しているのだ。
  • TEXT BY 葛原信太郎
  • PHOTOS BY 高木亜麗
  • EDIT BY 瀬尾陽(Eight Career Design)
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