キャリア再開を支援するプログラムを経て正社員へ――D&Iの体現を目指すマイクロソフトの働き方とは

コロナ以前からリモートワークを取り入れるなど、働き方改革を推進してきた日本マイクロソフト。現在は働く場所や時間、方法などを柔軟に選び取る「ハイブリッドワーク」を実践している。ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を企業文化の一つとして掲げる同社は、より多様な働き方を目指し、長きにわたってワークスタイルの変革に挑んできた。

その取り組みの一つが「リターンシッププログラム」。

今回は、リターンシッププログラムを経て同社へ入社した瀬戸瞳と西中志保にインタビュー。プログラムに参加したきっかけや、マイクロソフトならではの企業文化、働き方など、同社で働く魅力に迫った。


リターンシッププログラムとは
一度キャリアを中断すると、正社員として社会復帰することが難しい日本の労働市場。その現状を受け、日本マイクロソフトがスタートしたキャリア再開・職場復帰の支援プログラム。結婚、出産、介護や家族の転勤など何らかの事情で正社員としての就業から離れている方を対象に有給のインターンシップの機会を提供し、正社員化へのきっかけを作る取り組み。インターンの期間は3〜6ヶ月程で、期間やプログラムの内容は参加者や所属部門の状況にあわせて調整される。
またインターン終了後は、今回ご紹介する二名のように マイクロソフトでの正社員として就業を始めたり、もしくは他社でキャリアを再開する方もいる。

瀬戸瞳
日本マイクロソフト株式会社 クラウド&ソリューション事業部 テクニカルセールス
新卒でIT企業に入社し、ソフトウェアエンジニアとして従事。その後、仕事と子育てのバランスを求めて独立し、6年半フリーランスで開発業務を手がける。2019年、リターンシッププログラムを経て入社。サポートエンジニアとして活躍後、2021年に営業チームへ異動。
西中志保
日本マイクロソフト株式会社 カスタマーサクセス事業本部 カスタマーサクセスアカウントマネージャー
新卒でパッケージシステムの開発企業に入社し、導入コンサルタントを経験。結婚を機に退職し、1年半は専業主婦として過ごす。派遣事務としてキャリアを再開した後、リターンシッププログラム経由で入社。

インターンを経て社会復帰できる「リターンシッププログラム」

──はじめに、お二人のキャリアについて聞かせてください。

西中 志保(以下、西中):私は新卒でパッケージシステムの開発・導入を行う企業に入社し、導入コンサルタントとして約5年半働きました。今振り返ると、前職では生活の中心が仕事で、毎日仕事に没頭していました 。結婚を機に退職し、1年半は専業主婦をしていたのですが日々を過ごす中で「また働きたい」という思いが強くなったため、就職活動を開始。友人から「こういったプログラムがあるよ」とリターンシップを紹介され、応募に至りました。

瀬戸 瞳(以下、瀬戸):私はソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートしました。最初はIT企業に勤務していましたが、出産して環境が一変。仕事と育児の両立が難しくなったため、フリーランスのエンジニアに転向し、6年半は個人で活動していました。その後、もう一度企業で働きたいと考え、リターンシップに応募。そのままマイクロソフトに入社して、社内異動を経験し、今に至ります。

働く時間も場所も選択肢がある。柔軟な働き方ができるのが、マイクロソフトの魅力

──入社前、マイクロソフトにはどんな印象を持っていましたか?実際に働いてみて、印象が変わった部分はありますか?

西中:特に印象的だったのは、2019年以前からリモートワークが当たり前に根付いていた点ですね。当時はまだコロナ禍になる前だったため、日本ではまだ珍しい働き方でしたし、私もまだ仕事に不慣れなのに大丈夫かな?と最初は心配でした。しかし、皆さんも同じ体験を成されたと思いますが、慣れるととても働きやすく気に入りました。ちょっとした合間に家事もできるのが良いですね。

瀬戸:入社前は、実はあまりポジティブな印象を抱いていませんでした。日系企業でしか働いたことがなかったため、外資系と聞くだけで「まわりを蹴落とすような、個人主義の人が多いのでは」と想像していたのです。しかし、入社してそのイメージとは真逆であることが分かりました。社員のバックグラウンドから働き方、社内でのキャリアの考え方などにおいても、ダイバーシティ&インクルージョンを肌で感じられる環境です。お互いを尊重し、支え合いながら働いています。

──働く上で、特に魅力に感じている点があれば教えてください。

西中:やはり、働き方の選択肢が多いことは大きな魅力です。目標を達成するために最適な働き方を自身で考えて調整するので、自分の生活に合ったスタイルを選択できます。各々が自分に合わせた仕事の形を見つけているので、私も自分らしく働けています。

一方で、仕事におけるKPIはかなり明確に定められていることもポイントかと思います。達成すべき基準がきちんと決まっているからこそ、そこに至るまでの過程を柔軟に考えられる。それも魅力のひとつだと考えています。

瀬戸:「組織の階層が浅いこと」ですね。一般的な企業だと、主任や課長補佐など様々な役職があると思うのですが、マイクロソフトは「メンバーの2階層上の上司が社長」というケースもあるくらい、役職の階層が浅いんです。その結果、上司との距離感が近くなり、 フランクに話かけられる関係性が築きやすいと感じます。また社員一人ひとりが自主性をもって仕事に取り組むことにもつながっていますね。

キャリアの歩み方も人それぞれ違っていい、という考え方

──現在はどのような業務を担当されているのですか?

西中:カスタマーサクセスアカウントマネージャーという役割を担っています。当社では顧客のDX支援を行う際、営業やトラブルシュート担当など様々な役割の社員が1つのバーチャルチームとなって集結するのですが、マイクロソフトの窓口としてお客様のビジネスに伴走するのが私の役目です。お客様が抱える課題を捉え、適切なタイミングで適切なサポート、提案ができるようにIT戦略の企画からチーム内の調整・橋渡し役を担います。現在は、3社の金融企業を担当しています。

瀬戸:入社時はサポートエンジニアとして勤務していたのですが、2021年に営業組織に異動しました。マイクロソフトの営業部門は、大きく分けると担当顧客を持つ「セールス」と、製品を担当する「テクニカルセールス」という2種類に分かれているのですが、私は後者のテクニカルセールス。お客様の課題や希望に合わせて、技術部分の提案やご支援を行っています。

──普段どのような働き方をしていますか?

西中:現在は、ほとんど在宅勤務ですね。業務の前後や合間に家事をこなしつつ、大体9〜18時の間が勤務時間になっています。緊急対応がある時は別ですが、いつも18時前にはPCを一旦閉じて、ヨガやピラティスをしたり、家族や友人と食事に出かけたりと自分の時間を過ごします。私は前職でワークライフバランスの改善を課題に感じていた経験があるので、今の仕事ではメリハリをつけるようにしていますね。自分の中できちんと優先順位づけをして、18時以降は意識的にプライベートへ頭を切り替えています。

出社するのはチームミーティングがある月1回ほど。チームメンバーと直接会う機会はかなり少ないですが、Microsoft Teams上で雑談を楽しむ時間などがあり、関係性も築けているので、コミュニケーション不足による不安は特に感じていません。

瀬戸:私も、お客様先に行く時以外は基本的に在宅勤務です。業務と並行して、食事の準備や家事も進めます。子育てしながら働いている身としては、時間の使い方を調整できるのはありがたいですね。

子育てと仕事を両立させるコツは、タスク管理ツールを活用して業務効率を高めること。私の仕事は打ち合わせがとても多いのですが、Outlookのスケジュールには必ず、「打ち合わせを入れない時間」をあらかじめ設けています。その間に集中して個人の作業を行うことで、生産性が高まるんです。

──お二人の今後のキャリア目標を教えてください。

西中:私がそうしてもらったように、チームメンバーの育成に貢献していきたいと考えています。メンバーとしてできることを増やしていきたいなと考えています。

瀬戸:私は長年技術開発やサポートの畑にいたところから、去年技術営業という新職種にチャレンジしたので、まずは営業スキルを高めていきたいですね。マイクロソフトだからこそ提案できるテクノロジーの幅と深さをもって、よりお客様のビジネスに貢献する提案を行っていけるようになりたいなと思っています。

「経験年数を重ねたらマネジメント職に就く」というキャリアステップが一般的には多いのではと思いますが、マイクロソフトには「マネジメント職への昇進=キャリアゴール」といった考え方はありません。部下を持たずに仕事の幅や深さを変えていくことも、一つのキャリアの歩み方だと捉えられています。事実、一度マネージャーを経験した後、メンバーに戻る社員もいます。キャリアの歩み方にひとつの正解はなく、それぞれの道が多様性を持って受け入れてもらえることは、当社の大きな特徴だと思います。こういったキャリアの考え方が一般的にもぜひもっと広まってほしいと思っています。

マイクロソフト全体に根付いている「助け合い」の文化

──改めて、マイクロソフトでの働き方には満足していますか?

西中:とても満足しています。先ほどお話ししたとおり、働く場所や時間に柔軟性があるためとても働きやすいです。また、助け合いの文化が根付いていることも、満足している理由のひとつです。プロとして自分の仕事にプライドを持ちつつも、いざという時には助け合える風土があります。だから仕事がしやすいんですよね。

瀬戸:はい、満足しています。マイクロソフトは、アカウンタビリティ、つまり当事者意識を持った社員がとても多い組織。たとえ全く違う部署やチームだったとしても、相談すれば「どうしたらお客様のためになるか」を一緒になって考えてくれます。

また、福利厚生もとても充実しています。仕事だけでなくウェルビーイングの向上も目指している会社なので、上司からも会社の制度を積極的に活用し、リフレッシュすることを勧められます。

西中:あとは社員が会社や自分の組織を評価する仕組みもありますよね。その結果が匿名で回収され、改善策が検討されます。その後マネージャーが実際に動いてくれるので、きちんと改善へ繋がっていくのです。

──働く上で、大切にしている視点や心がけていることはありますか?

西中:カスタマーサクセスアカウントマネージャーとして、「仕事をお願いする相手のKPIをきちんと把握しておくこと」は常に意識しています。プロジェクトを成功に導くためには、チームの実力を最大限に引き出すことが大切。その鍵を握っているのが社内調整を担う私なので、「依頼する相手にメリットがある仕事かどうか」「その方のKPIに対して無茶振りをしていないか」…といった点を気にかけています。それぞれの個性を活かせる仕事を任せることが、チーム力の最大化に繋がると思うのです。

瀬戸:技術領域を担う立場なので、謙虚な姿勢で学ぶことは大切にしています。特にマイクロソフトの製品はアップデートのサイクルが速いので、常に学び続ける姿勢が大切です。加えて、先ほども少し触れた「当事者意識」は常に頭に入れています。自分がマイクロソフトの看板を背負っているという意識を持ち、どうしたら当社のファンになってもらえるか?ということを日々試行錯誤しながら営業活動に励んでいます。「やっぱりマイクロソフトの営業さんは違うね」と思っていただける対応を、今後も心がけていきたいですね。

──最後に、この記事の読者へメッセージをお願いします。

西中:リターンシップがとても良いプログラムであることを伝えたいです。まず、中途採用といえば即戦力採用が一般的である中で、直近の就業経験があるわけではない人材を受け入れるというのは社会的にも意義があることだと思います。実は私も最初は、正社員で働くことを希望しつつも、ブランクがあることに大きな不安があったのですが、「朝起きて会社に行く」くらいのステップから始めて、徐々に体と自分の意識を仕事のリズムに慣らすことができました。勇気を出してリターンシップを受けたことで、こんなにも世界が変わるなんて。もし興味がある方がいたら、全力で背中を押したいです。

瀬戸:就業ブランクがある中での社会復帰はやはり不安がつきものですし、ましてや大企業への就職となると心配事も増えますよね。その意味では、リターンシップはとてもいい機会だなと改めて感じます。インターン期間中のプログラムの内容は、参加者のブランク期間やこれまでの経験を加味して柔軟に調整してもらえます。こんなプログラムは希少だと思うので、ぜひ参加してマイクロソフトについて理解を深めてもらえたらなと思います。

  • TEXT BY 白井秀幸
  • PHOTO BY 黒羽政士
  • EDIT BY 小田川菜津子(Eight)・VALUEWORKS
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