戦略から実装まで、一気通貫でお客様と伴走する――アクセンチュアの「トランスフォーメーションコンサルティング」の立ち位置

2018年に経済産業省が「DXレポート」を公表してから、多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが進められているが、実際に企業改革し成長を実現している企業はまだまだ少ない。障壁となっているのは、「DX人材の不足」だ。 アクセンチュアのトランスフォーメーションコンサルティング(通称GTM=「Go To Market」 の略)グループでは、クライアント のDXをはじめとするビジネス課題に対して、幅広いテクノロジーやソリューションを駆使して解決に導いている。CEOをはじめとした各企業のトップと対峙し、ゼロから新たなプロジェクトを生み出しているのだ。GTMグループをリードする谷山敬人へのインタビューを通じて、DX人材育成を兼ね備えたアクセンチュアのトランスフォーメーションの真価に迫る。


表面化していないクリティカルな課題を見つける

──2022年に立ち上げられた「トランスフォーメーションコンサルティング(GTM)」は、どのような組織ですか?

まず、GTMは「Go To Market」の略であり、一般的には自社の製品やサービスを世の中に提供していくことを指します。そのように聞くとセールスのイメージが強いかもしれませんが、アクセンチュアのGTMにおいては案件を自らつくり出し、その必要性をお客様に理解していただきながら、その後のトランスフォーメーションまで実行していきます。

初期の段階では、本来あるべきビジネスの姿を明確化し、それを実現するのに必要な変革やソリューションを提案します。多くの企業ではDXの課題意識は持ちつつも、クリティカルな課題に気づいていないことが多く、どこから着手するべきなのか認識できていないこともあります。 お客様の悩みや不安を理解し、最先端の事例も踏まえて変革案、つまりは、その企業が必要としている「トランスフォーメーションの定義」を導きだします。その時点でようやく、プロジェクトが生まれます。

その後のプロジェクト実行フェーズでは、GTMの主導でアクセンチュア社内における様々なチームの力を結集し、変革に取り組みます。例えば、戦略立案チーム、業務変革チーム、SAPやSalesforceなどの基幹ソリューションチーム、レガシーシステムの刷新・移行に強みを持つ技術チームなどと連携して、戦略・企画立案から、実行・運用まで一気通貫で支援します。

谷山 敬人(たにやま のりと)
テクノロジー コンサルティング本部 トランスフォーメーションコンサルティング日本統括 兼 カスタマー&セールス日本統括 マネジング・ディレクター。
1998年にアクセンチュア入社。製造・流通業界を中心としつつ、多岐にわたるお客様の案件・プロジェクトを指揮。全社デジタルトランスフォーメーション、全社業務システム再構築、業務生産性向上、大規模基幹システム構築など、さまざまなタイプの案件を主導。特に近年は最新テクノロジーを活用した企業のデジタルトランスフォーメーション、企業変革案件を多数手がける。

──具体的にはどのようにプロジェクトを進めているのでしょうか?

まず、実現したいことを整理してゴールを明確化する必要があります。例えば、ある企業では社内のデータを全社で有効に活用できるようにしたいと考えていました。意思決定を正しくスピーディーにすることがゴールです。さらには、AIの自動判断で、営業、サプライチェーン、経理・財務などの各部門において、最適な経営判断ができることも実現したいと考えていました。

お客様の想いを叶えるためには、私たちが全体像を描き、必要なITを定義していく必要があります。全体の設計ができた段階で、現実とのギャップを正確に把握します。そして、投資金額を抑えつつ効果を最大化するため、どこから着手するべきか全体の優先順位を考えていきます。

多くの企業のIT部門では、今までレガシーシステムの構築や保守運用に取り組んできたため、直接的にビジネスの成果を求められることはさほどありませんでした。しかし、DXで企業全体を最適化していくときには、目標達成に紐付けてIT部門全体を変えていく必要があります。

現場をDXに巻き込み、デジタル人材を育成していく

──今まで取り組んできたDX事例を教えてください。

わかりやすい事例 として、2021年の株式会社資生堂様との戦略的パートナーシップ締結があげられます。合弁会社「資生堂インタラクティブビューティー株式会社」を設立し、デジタルを活用した新しい顧客体験の創出や、事業モデルの構築に動き出しました。これまでアクセンチュアが培ってきた様々な企業のDXや、顧客体験を刷新するノウハウが注ぎ込まれています。

実際のプロジェクトでは、資生堂社内の各部署を横断しながら、蓄積しているデータを掘り起こして分析し、デジタルの力で各種の業務プロセスを高度化・効率化することに取り組みました。現在も資生堂様とのパートナーシップを大切にしながら、各種のデータ統合や分析、業務プロセスの高度化・効率化を進めています。

本事例にかぎらず、私たちは戦略・企画立案から実装、そして結果を出すところまで、全ての工程に関わります。どんなに素晴らしい戦略を考えたとしても、社内のリソース不足で実行に移せないのでは意味がありません。GTMはアクセンチュアの技術力を駆使しながら、プロジェクトの実現可能性をしっかり担保していきます。

──クライアントが抱えている課題は、どのようなものが多いのでしょうか?

多くの企業が課題だと認識しているのが「適切なスキルを持ったDX人材がいない」ということです。自社人材だけでなく、外部の専門ベンダーやコンサルティング会社との連携、あるいはDX専門人材を新たに採用することで対応している企業もいますが、そもそも現状では世の中にDXを推進できる人材が少ないため、社内にいる人材を育成していく必要があります。

今後、企業の人材不足は一層深刻化し、人口減に伴ってマーケットの縮小なども進んでいきます。中長期的な視点も持ちながら組織を最適化する必要がありますが、各企業における人材の高齢化も相まって、対応が難しいという実状です。経営層がDXを推進しようとしても、社内のシニア層がITに抵抗を感じるケースもあります。

GTMは、そのような社会状況を変えるべく、コンサルティングのみならず人材育成の領域でも価値を提供しています。システムを構築して終わりではなく、お客様と一緒に悩み、汗を流すことで、社内のメカニズムや基盤、文化までも変革し、結果としてDX人材の育成まで実現することが我々の仕事だと思っています。

日々のコンサルティングにおいて心がけているのは、絵空事を描かないこと。GTMは、クライアントの実情を把握しながら、実現可能性を担保したグランドデザインを構築していく。

──各企業の課題解決において、難しさを感じることもあるのではないでしょうか。

課題の内容や企業体質によって異なりますが、トップダウン型の経営を行っている企業の場合は、経営者の声が現場を含めた全社に届きやすく、行動に繋がりやすいため、比較的スムーズに変革を進められます。その一方で、それ以外の日本企業では、大胆な変革に着手することが難しい傾向にあります。合議制で物事を決めたり、現場の声を尊重する慣習があったりもするので、簡単には進められません。

アクセンチュアでは、CEO、役員、部長、現場などピラミッド状のレイヤーにわけて、それぞれに担当者を付けていきます。そうすることで、レイヤーごとに議論しながら課題を抽出し、その都度承認を得ながら、丁寧に解決に導いていくようなフローを設計するのです。ここでしっかりと議論して承認へ導くことで、社内のネガティブな心情を変えることができます。

──経営層と現場で意識にギャップがある場合、どのように働きかけるのでしょうか。

ある事例ではお客様企業内で影響力が強い現場のリーダーの方を、プロジェクトの中心メンバーに据えて推進していきました。というのも、現場の方々は、今までの歴史や取り組んできた実績もあるため、変革に対してネガティブな反応をすることもあります。変革の必要性を理解しているものの、現状を変えることに抵抗感があり、DXのマイナス面を指摘しがちなのです。

しかし、そういった現場の人物をプロジェクトの中心に据えると、立場が「当事者」に変わりプロジェクトを進める責任が出てきます。ネガティブな発言が減り、自然とDXを推進しようとする思考に変わっていくのです。プロジェクトを前向きに進めていくには、いかに現場の方々を巻き込んでいくかが重要です。

他にもよくある手法として、特定の社員をプロジェクトの専任にすることがあります。例えば、ある営業部門の担当者に専任辞令が出された場合、人事評価を営業部の上長が行わず、プロジェクトの成功が評価指標になります。レポートラインも変わってくるため、社員が当事者意識を持ちやすく「自分ごと化」して取り組むようになります。いずれにしても、これまで企業として取り組んだことがない試みを推進していただく訳ですから、お客様自身に本気になっていただく必要があります。そういった意識を変革することも、我々の仕事のひとつです。

主導的に仕事を組み立てることで、ヘルシーな働き方を実現

──GTMの強みは、どんなところにあるのでしょうか?

お客様の課題に合わせて、世の中にある様々なITソリューションから最適なものを組み合わせて提案できるのは、GTMならではの強みだと思います。各社が提供しているITソリューションは、それぞれ得意な領域があると同時に、重複したり競合したりしている領域も多くあります。「当社の製品は営業領域も強い」「データ分析もできる」など、各社がPRしているので、専門的な知識がないと最適なソリューションを選べないのです。GTMは多くの専門家を抱えているので、本当に必要なものだけを組み合わせて提案することが可能です。

特定の領域だけではなく、全社レベルで組織やシステムを根本的に変革する大規模な全社プロジェクトに携わることも多くあります。そのような機会は、アクセンチュアが積み重ねてきた信頼の上に成り立っており、GTMだからこそ取り組める案件です。IT分野のグランドデザインで社会に大きな価値を提供できるように、様々な部署と連携しながら取り組んでいきます。

クライアントが抱えている課題は、システムの老朽化など足元の課題であることも多い。「必要だが、社内決済でビジネス効果を説明できない」など現場の悩みにも寄り添いながら、クライアントと共に最適なソリューションを見つけ出していく。

──では、GTMにおける仕事の醍醐味を教えてください。

お客様自身も気づいていなかった課題を発見することで自らプロジェクトを生み出し、ゼロからイチを生み出す超上流フェーズからプロジェクトに携われるので、アクセンチュア社内でも他の部署にはない仕事のやりがいを感じられます。さらに、自分が携わったDXにより、企業がこれから飛躍的な成長を実現することもあるので、大きな達成感を感じることもあるでしょう。

また、各企業の代表や経営層と仕事をする機会が非常に多いため、ビジネスパーソンとして高い視座に刺激を受けることも多いのではないでしょうか。社会において、どんなことが求められているのか。経営層の価値観に触れながら働くことで、幅広い視点で考えられるようになります。

さらに、最新のテクノロジーに触れながら、最適な解決策を提供できることも仕事の大きな醍醐味です。多種多様なテクノロジーが日々生み出されていますが、GTMでは最新情報に日々触れながら実際にお客様のDXに携わるので、自身もDX人材として成長することができ、キャリア形成の観点で大きなプラスになると思います。

──日々の仕事で、働きやすさはどんなところに感じられますか。

GTMは自らプロジェクトを生み出し、主導的に仕事を組み立てることができるので、自分らしいワークライフバランスを保ちやすいと思います。仕事とプライベートを両立しながら、ヘルシーな働き方を実現できるのではないでしょうか。また、アクセンチュアでは、全メンバーに向けて世界中の提案素材や過去事例を公開しており、社内に蓄積している情報を活用することで、スピード感を持ってプロジェクトを進められる点も、日々働く上での利点だと思っています。

デジタルイノベーションと新しいテクノロジーで、無駄のない仕組みや組織をつくっていくことは、社会にとっても非常に有意義なこと。自分と社会にとって価値のあるプロジェクトが、仕事の中心になります。私たちが変革を実行していくことで、社会に多くのポジティブな影響と機会を生み出すことができるのです。

幅広いソリューション提供で、得意な領域が広がっていく

──GTMでは、どのような人材が求められているのでしょうか?

一番重要なのは、「お客様のビジネスに貢献できるようになりたい、本質的な課題解決をしたい」という気概を持っていることです。お客様の課題に対して、複数のソリューションを組み合わせて、過重投資させることなく過不足無くシステムを整え、解決へと導くことが仕事ですが、最初から複数のソリューションに精通していて、ビジネスを推進できる人材なんてなかなかいません。そこに辿り着くために一番大事なのは当人の志であり、プロアクティブな思考です。

アクセンチュアは、手を挙げる人材に対しては、道具や場所、機会を惜しみなく提供する会社です。前述したとおり、社内に蓄積している情報や優秀な人材も多く、自ら行動してどんどんプロジェクトを推進していきたい方は、GTMの環境に大きな魅力を感じると思います。例えば、ソフトウェアエンジニアやPM・PLとして働いている方で、もっと直接的にお客様のバリューに貢献したいと考えているなら、最適な環境かもしれません。

入社後、最初は今まで取り組んできた分野の経験を活かせる案件からスタートし、お客様と一緒に仕事をするなかで領域を広げていくことが多いです。最初から特定の業界に特化している必要はありません。プロジェクトによって業界が変わっていくので、得意な領域にこだわらず柔軟に対応していくことが求められます。お客様のビジネスや最新のテクノロジーなど、色々なことに興味を持って取り組める方であれば、GTMにフィットしやすいと思います。成長への意欲を大切にしながら取り組んでいただきたいです。

──最後に、今後の展望を聞かせてください。

最終的には、アクセンチュアの案件全てにGTMのチームが入り、お客様と一緒にゼロから企画立案を進めていきたいと考えています。アクセンチュアを唯一無二のパートナーだと感じていただけるように、お客様の成長にコミットしながら仕事を拡げていくことが理想です。

お客様の視点で考えると、世の中にはまだまだ効率化できることが多いと思います。たとえばテクノロジーやソリューションの活用やパートナー選択において、非効率な業務を取り除き効率的に事業を進められるように支援していきたいと考えています。私たちGTMにもまだまだ改善の余地はあるので、お客様視点でより大きな価値を提供できるように、業務の効率化を進めていきたいと思います。

現在も、DXに苦戦する企業からの相談が後を絶たない状況である。クライアントの課題に真正面から向き合い、豊富なソリューションで実行性を担保できるのが彼らの絶対的な強みだ。
  • TEXT BY 平原健士
  • PHOTO BY 丹野雄二
  • EDIT BY 小田川菜津子(Eight)
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