素材・エネルギー業界の未来を切り拓く。アクセンチュアのインダストリーコンサルタントが実現する、データドリブンのビジネス変革

人口減少で大規模な需要縮小が予測されている日本のエネルギー産業。関連企業にとっては、既存事業の合理化や効率化、新規ビジネス開発が急務になっている。化学や鉄鋼など素材に関わる業界においても、データを中心とする業務モデルへの移行が求められている。

アクセンチュアのビジネス コンサルティング本部では、各業界への深い知見と、AIやアナリティクス、IoTといった「New IT」をかけ合わせ全体最適化を推進。グローバルの先進的企業では、次世代型ビジネスモデルへの転換を既に達成しつつある。ビジネス コンサルティング本部のシニア・マネジャー柳美咲へのインタビューを通じて、素材・エネルギー業界の未来を切り拓くデータドリブンの企業変革に迫る。


チームを率いる楽しさを実感したい

──まず、これまでのキャリア変遷について聞かせてください。

学生時代は国際経済学科に所属し、グローバルな視点で産業の成り立ちや背景、今後のトレンド・発展性について広く学びました。そのなかで特に興味深いと思ったのが、素材・エネルギー業界です。BtoBの最上流ともいえるビジネスであり、メーカーや小売など各業界への波及効果が非常に大きいと感じました。大規模なプロジェクトに携わりながら自分の可能性を広げたいと思い、新卒で大手の石油元売会社に入社。石油・ガス開発ビジネスにおける戦略策定や市場調査など、上流工程に携わるようになりました。

石油・ガスは地下や海底など目に見えないところに埋まっているため、地中深く堀り進むことからスタートします。資源開発には通常数年かかり、莫大な資金が必要になるため、複数社とジョイントベンチャーを組み、プロジェクトごとに進めていくことが基本的な流れになります。ただ、実際に開発を進めても、資源があるかどうかは実際に掘ってみないとわかりません。その成功確率や感度を分析しながら、ビジネスとして成り立つのかどうかを試算することが必要になります。

柳 美咲(やなぎ みさき)
ビジネス コンサルティング本部 コンサルティンググループ シニア・マネジャー。大手石油会社を経て、2017年にアクセンチュア入社。素材・エネルギー業界において、デジタルを活用したデータドリブンの営業改革に取り組む。顧客接点強化、人材育成、新規事業創出、付帯業務効率化で多くの企業変革をリードしている。

──転職しようと思ったきっかけを教えてください。

2016年に原油価格が急落し、それに伴い会社の売上が大きく減少したことがきっかけです。資源開発のための投資費用が縮小され、石油・ガス開発を積極的に進められない状況になったのです。当時、投資費用を計算する部署にいたので、自分の活躍できる領域がかなり限定されることがわかりました。

それならば、もっといろいろな経験を積める環境で新たに挑戦したいと思い、転職を決意しました。一緒に働いていた上司から「若いうちにチームを率いることで、仕事の楽しさがわかる」と常々言われていたこともあり、他のメンバーと連携しながらやりがいを持って働ける環境としてコンサルティング業界を選びました。国内の大手事業会社では、チームの責任者になるまで一定の年数がかかることが多いと思いますが、外資系のコンサルティングファームであれば、自分の働き方次第で、早期にチームを率いることができるのでは、と考えたのです。

──アクセンチュア入社の決め手はどんなことでしょうか?

他社にはない先進性を感じた点です。2017年当時は「デジタルの波が来る」とようやく言われ始めていた時期ですが、アクセンチュアは既に素材・エネルギー業界のDXにも取り組んでおり、グローバルで多くの案件を手掛けていました。デジタル領域において、他社が追いつけないほど豊富な知見を持っていると感じたことが、転職の大きな決め手です。

コンサルティングファームは何社か受けましたが、そのなかでもアクセンチュアは抜群に風通しが良い印象でした。今思えば、私も自己PRで攻めたことも言っていたと思いますが、否定されたことは一度もありませんでした。私の話を真剣に聞き、それに応えてくれる。面接というよりも、ディスカッションのような雰囲気に魅力を感じたのです。

経営層と現場の両方に目線を合わせていく

──入社後は、どのような業務に携わってきましたか。

主に素材・エネルギー業界のお客さまを担当し、営業・マーケティング領域の企業変革を推進してきました。デジタルが世の中に広く浸透し、情報を取得しやすくなっていますが、まだまだ情報収集やデータ分析に課題を持つ企業が多くあります。最近増えているのは、今までの感覚的な営業・マーケティングから脱却し、データドリブンの営業改革を進めようとするケースです。お客さまのニーズを正確に把握し、自社の商材を効果的に見せるにはどうすればいいのか。精度の高いデータ分析・活用方法を伝えながら、顧客接点の強化に努めています。

しかし、勘や経験で成功してきたお客さまに対して、データを元に営業活動へ取り組むように伝えても、当然ながらすぐに意識を切り替えることはできません。効果が出れば売上があがることや、待遇改善に繋がるなどメリットを伝えたり、評価制度を変えることも提案しながら、包括的に改革を支援しています。

──素材・エネルギー業界では、改革を推進する上でどういった点が課題となりますでしょうか?

世の中でDXが叫ばれているなかで、他の業界と比較するとデジタル改革の余地が多々あると感じています。その原因としてあげられるのは、エンドユーザーとの距離が離れていることです。素材・エネルギー業界の会社は素材や部品を販売しているので、素材メーカーやリテール企業の先にいる最終ユーザーのイメージが湧きにくく、結果として全社の課題抽出が表層的で、改革の方向性が不明瞭になりがちです。

ビジネス転換を提案しても、その必要性を実感していただくことが難しいケースも。現場レベルで変革の意識を醸成することが困難な時は、経営層も巻き込みながら新たな取り組みに繋げることもあります。

日本の素材・エネルギー業界において、デジタル化へ本腰を入れる企業が年々増加している。経営層の強い意思決定とリーダーシップ、さらに「New IT」の掛け合わせによる企業変革が重要だ。

──経営層には、具体的にどのようなことを伝えているのでしょうか?

よくお伝えするのは、他社に先んじて変革することが競争力の強化に繋がること。さらには、今後の事業や業績にも関わってくる重要なことだと、リスク管理の観点でもお伝えするようにしています。ただ、難しいのはこのような大上段の話を経営層の方々にお伝えするものの、実際に改革を実行する現場の方々には伝わりづらいということです。各状況で所長や部長の目線に合わせながら話していくことが重要になってきます。

視点は変えつつも、経営層と現場の方々に伝えるストーリーは、全体で一貫している必要があります。経営層の視座で現場の意識を高めながら、現場の悩みや課題にも寄り添っていく。自分の視点を上下させながら動くことが、一番の難しさだと感じています。私たちの言葉で担当者の方々が動きづらいときには、あえてトップダウンで方針を伝える。ボトムアップで意見を出してもらいながら、現場に働きかけることも行います。いわば黒子のように動きながら、社員の皆さんの自発的な行動を促せるように心がけています。

もちろん、外部の意見の方が伝わりやすいこともあるので、第三者目線であえて厳しいことをお話することもあります。現場の担当者が経営層にエスカレーションしづらいときには、「こんな意見もあるのではないでしょうか」と私たちが間接的に伝えることも。それを受けたトップが、分かりやすい方針で全体に落とすなど、コミュニケーションの円滑化に繋がるよう努めています。

──自走できる組織にするため、心がけていることはどんなことでしょうか?

自走するためには「仕組み化」が重要なポイントになります。自分たちで維持できるサステナブルな業務運営を担保することが必要です。デジタルやテクノロジーを活用した仕組みはもちろんのこと、制度面では人事制度や評価制度にまでしっかり反映させていきます。

営業・マーケティング領域でいえば、何に基づいてPDCAを回していくのかも非常に重要になってきます。どの指標によって自分が評価されるのか、あるいは日々のディスカッションにはどんな指標が必要なのか、しっかりと認識できる環境を作っていきます。お客さまのためにも、「自走=仕組み化」という意識を持って変革に取り組むことが大切です。

経営層の視座で現場意識を高めながら、現場の悩みにも寄り添う。視点を上下させながら、黒子のようにお客さまの課題を解決に導くことが求められる。

DXは理想と現実のギャップを埋める手段

──素材・エネルギー業界のお客さまが抱えている課題は、どのようなことが多いのでしょうか?

デジタルツールを導入しているものの、システムの運用に留まり業務自体を変えるところまで行き着いていないケースが多いことですね。DXは目的ではなく手段なので、どのように業務を変えて顧客接点の持ち方や製品の売り方を変革できるのかが重要です。

デジタル技術を活用する前に、まずは5年後、10年後を見据えながら、会社がどのように変わるべきなのか構想を練る必要があります。外部環境の変化も予測しながら、今後のビジネス展開を考えなければいけません。とはいえ、一足飛びには実現しないので、理想と現実を見比べてどれくらいのギャップがあるのかを把握する必要があります。そのギャップを埋める有効な手段としてデジタルを活用していくのです。

もちろん、全社ではなく部分的なデジタル改革に取り組むこともありますが、中長期的なビジョンに伴走するケースも多くあります。全体構想から個別の変革に落とし込んでいく。人材育成やスキルアップにも携わりながら、一気通貫で支援できることにやりがいを感じられます。

──改革を推進する上で、アクセンチュアの強みをどんなところに感じていますか。

まず、最新のグローバル事例を踏まえて、説得力のある説明ができることです。素材・エネルギー業界においては、国内よりも海外の方がデジタル化が進んでいます。さらに、アクセンチュアは業界をリードする大手企業を支援しているので、豊富な経験を踏まえた最適な提案ができるのです。

また、私たちは素材・エネルギー業界以外にも多くのお客さまと繋がりがあります。お客さまの先にいるメーカーとも関わっているので、求められている市場ニーズまで把握することができます。

そして、構想策定するところだけではなく、しっかりと効果を出すところまで伴走することも大きな強みです。トップマネジメント層とお話するだけではなく、現場の担当者が抱えている課題や悩みにも寄り添いながら、最後まで確実に戦略を実行していきます。

最先端のテクノロジーを最適化しながら、お客さまのビジネス成果にコミット。経営層と現場担当者の想いに寄り添いながら、一気通貫で企業変革を実現していく。

──入社時に期待していた、チームを率いる仕事の楽しさは感じられていますか?

入社3年目にはマネジャーになり、6年目の現在に至るまで充実した日々を過ごせています。かなり早いタイミングで希望を叶えられたのはもちろん、想像していたよりもチームの規模が大きく、複数チームのマネジメントに取り組んでいます。評価指標は社歴に全く関係なく、その時点のパフォーマンスに基づいた評価項目で評価されるような仕組みです。

ピープルリードへの定期的な相談、自分ができている部分と強化が必要なところを認識できます。どこに注力するべきなのか明確にわかりますし、自分のマネジメントの改善ポイントを把握できるので非常に助かります。

──マネジメントで苦労したのはどんなことですか。

各メンバーの強みや苦手なことを理解してタスクを割り振ることに、最初はかなり苦労しました。それぞれ得意分野を持つメンバーが集まっているのに「教育しなきゃいけない」という固定観念にとらわれ、苦手なこともタスクとして振って成長を促そうとしていました。その結果、プロジェクトに遅れが出そうになり、自分が巻き取って解決することもあったのです。

その後、2020年以降は入社半年以内の新メンバーが、チーム内にかなり増えたこともあり、無理に教育しようとするのではなく、得意なことをみんなにやってもらう方針に切り替えました。チームマネジメントでは苦手を克服させるのではなく、たくさんの気付きを与えながら強みを伸ばすことが重要だと学ぶきっかけになりました。各分野のプロフェッショナルが集まっているので、得意領域におけるスキルの高さに日々驚かされています。

改革にはオーナーシップが必要不可欠

──アクセンチュアのビジネス コンサルティング本部では、どのような人材が求められているのでしょうか?

お客さまに対してはもちろん、社内においても一歩先んじた考え方を持ち、迅速に動ける人が求められていますし、社内でも評価されています。オーナーシップを持って物事を進められることが特に重要です。タスクを振られるまで待っているような方や、自分で考えることに苦手意識を持つ方は、環境に馴染みにくいかもしれません。間違っていても「私はこう思うので相談したいです」と言ってくれる人の方が働きやすいと思います。

スキルセットとしては、データ分析やマーケティングの知見はもちろん強みとして活かせると思いますが、最初からそれを求めているわけではありません。私自身、入社当時に営業・マーケティング領域の知識があったわけではないですし、データ分析や資料作成が得意だったわけでもありません。それよりも、物事をロジカルに捉えて構造的に整理する能力が求められます。論理的に物事を話せる方であれば、強みを発揮できる環境だと思います。

バックグラウンドはさまざまで、私のチームに関しては素材・エネルギー業界の出身者が特段多いわけでもありません。チームで初めて業界の知識を学ぶメンバーもいるので、専門分野の知識がないことを心配する必要はありません。

──今後、どのようなことに力を入れていきたいですか?

国内の素材・エネルギー業界は、DXの第一歩目をようやく踏み出したような状況ですが、これからデジタルを活用して大きな成果を生み出すところまで積極的に支援したいと考えています。営業・マーケティング領域の改革で、業績アップ、株価上昇、コスト削減など新たな価値を提供していきます。波及効果の高い一気通貫の取り組みを増やし、横展開できるように進めていきたいと思います。

──素材・エネルギー業界のDXで実現できる社会的なインパクトは、どのようなことでしょうか。

エンドユーザーのニーズは年々多様化していますが、それに対してどのように素材や部品で応えるのか、最上流でとことん突き詰めているのが素材・エネルギー関連企業です。エンドユーザーが今まで体験できなかったことを実現するための、いわば最初の起点になっているのです。

例えば、最近ESG(環境・社会・ガバナンス)が社会でよくいわれるようになりましたが、ESGを考慮した商品を開発するためには、素材企業として貢献していくことも新たな価値観だと感じています。素材・エネルギー業界は、そういった新たな潮流が生まれるときの土台として、今までにない価値を社会に提供できるのではないでしょうか。このようにインパクトの大きい仕事は、アクセンチュアだからこそできることだと思います。

持続的な競争力を維持・向上させていくためには、多様で移り変わりの激しいユーザーニーズを迅速に深く理解することが欠かせない。お客さまと共創しながら新たな素材・部材を生み出し続けることが、社会的意義の高い仕事に繋がっていく。
  • TEXT BY 平原健士
  • PHOTO BY 黒羽政士
  • EDIT BY 田尻亨太(VALUE WORKS)
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