クライアントと共創するBnB2Cモデルで、システム開発の業界を改革する。「世界一億MAU」に挑むゆめみの思い

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世界中のユーザーが毎日使いたくなるサービスを生み出すために。株式会社ゆめみが大切にしているのは、「BnB2C(ビー・アンド・ビー・トゥー・シー)」の考え方だ。受発注の関係ではなく、クライアントと共創する。システム開発における業界構造はいま、変わり始めている。


「ユーザーが毎日使いたくなるようなサービスをつくるためには、事業会社からシステム開発会社へ案件が丸投げされるような、従来の受発注の構造を変えなければならない」

株式会社 ゆめみの取締役、工藤元気はそう語る。

創業時からモバイル掲示板やECの開発・運営、クーポン配信など、モバイル活用マーケティング領域の事業を展開してきたゆめみに工藤が入社したのは2011年。以来、大手飲食チェーンや飲料メーカーなどのシステムやアプリ開発などに、営業やディレクターとして携わってきた。

システム開発が請け負う案件には、事業主側から所謂「丸投げ」されるケースがある。例えば、クライアント企業の業務システムを開発するような、ユーザーもワークフローも型が定まっているシステムであれば、「丸投げ」形式でも成り立つ場合は多い。

しかし不確定なエンドユーザーをターゲットとするスマホアプリなどの開発においては、「丸投げ」の構造が、結果的に良いサービスを生み出す障壁になっているらしい。「この受発注の構造を変えることができれば、ユーザーが毎日使いたくなるようなサービスがもっとたくさん生まれるはずだ」と工藤は言う。

システム開発の業界における課題とはなにか。そしてゆめみは、業界をどう変えようとしているのか。工藤の言葉から、その答えを探してみたい。

1000人体制で業界課題と向き合う

━━まずは、工藤さんがゆめみに入社した経緯からお聞かせください。

ゆめみは、私が新卒で入社した会社のクライアントでした。新卒入社した会社での営業の仕事を通して、多くのシステム開発会社やエンジニアと接しましたが、中でもゆめみは自律性や行動力、遂行力の高い人が多く、こんな会社で働けたらいいなと漠然と思っていました。

私はもともとはエンジニア志望ということもあり、会社のPCに好きなLinux OSを勝手に入れたりして楽しんでいたんです。それを当時ゆめみにいた方が「営業なのに変なことをしているヤツがいる」と面白がってくれて。そんな縁から、2011年にゆめみに入社したんです。

前職でゆめみと仕事をしていたときからファンだった。工藤は「ゆめみは入社前に抱いていたイメージそのものだった」と楽しそうに語る。

━━その頃よりも会社の規模はどんどん大きくなっていますよね。

現在の社員数は250人ほどですが、実はいま、1000人を目指しています。創業時は、サービスの質や社員の幸せのバランスを保つためには、100人前後が最適だと考えていました。しかし事業を続ける中で業界の課題が顕在化した。それをきっかけに、組織を大きくする方向に舵を切ったのです。

システム開発会社が受託する案件の中には、事業会社から「丸投げ」「多重下請け」されるものがあります。でもそのやり方では、クライアントにとって良い結果にならないことが多かった。この2つの構造が重なると、「なぜこのサービスをつくるのか」という目的が明確ではない状態で進んでしまうからです。システム開発会社は、どんなユーザーのどんな欲求充足、利便性、そして幸せのために開発するのかがよくわからない状態で取り組むことになる。そして出来上がっても、目的が明確ではないから、クライアントも半ば放置状態になってしまう。

また、例えばアプリの場合、ユーザーには多様なニーズがあり、年齢も性別もバラバラ。ペルソナが不確定なので、丸投げをされてしまうと要件定義が非常に難しい。作った後も、OSのアップデート等に合わせて定期的にシステムを改修をし続ける必要がありますが、事業会社側は「丸投げ」しているため、自分たちでメンテナンスすることができず、良いサービスとして成長しない。この受発注の構造こそが、業界の課題です。

━━なるほど、それをゆめみが変えようとしているのですね。

はい。この課題が顕在化したことで「私たちが業界を変えねばならぬ」という意思が生まれました。もともと私たちは、開発するサービスの先にいるユーザーの生活を豊かにすることを目的として、Quality&Agility(高品質と高機動性の両立)というバリューを大切にしています。これまで100人で出していたこのバリューを1000人でも再現できるようにすれば、いまよりもっとクライアントに寄り添いながら、ユーザーにとってより良いサービスを提供し続けることができる。それが、組織を大きくしようとしている理由です。

クライアントと共創する「BnB2C」モデル

━━でもどうやって、従来の受発注の構造を改善しているのですか。

我々はUXやCXという言葉が定着する以前から、ユーザー目線に立ち、クライアントの都合よりもユーザーの利便性を優先するという観点を持つように意識してきました。ユーザーのためにならないと思えば、「もっとこうした方がいい」「そのやり方はもう古い」など、生意気にもクライアントに物申すこともあるぐらいです。

一般的に受託開発会社は、BtoBtoCのビジネスモデルと言われますが、私たちが大事にしているのはBnB2Cという考え方。つまり、クライアントとゆめみが受発注の関係を超えて共創し、良いサービスをユーザーに提供するというスタンスで、一つひとつの案件と向き合っています。クライアントとチームになって一緒に変化する。それこそが業界構造の課題の解決につながり、良いサービスを提供し続けることができると思っているからです。

それから、私たちは「Bad News Fast」を合言葉にしています。悪いニュースやリスクは、すぐに伝えずにリカバリー案を考えて、後で巻き返せば良いと考えがちですが、悪いニュースは早い段階で共有した方がお互いに助け合うこともできるし、解決できる確率が高まる。些細な心配事でもすぐにクライアントと共有するということも、全社員に徹底しています。これも、共創しているからこそ成り立つことだと思います。

━━会社の目標として掲げている「世界1億MAU」への挑戦も、業界を変えるため?

毎月1億人が使うサービスは必然的に規模が大きく、生活に密接したものですよね。1億MAUを維持できるということは、言い換えればユーザーが使いたいものをつくれているということで、クライアントにとっても良いことだと思うんです。多くの人の役に立つものを提供すれば経済は回るし、そのシステムは技術トレンドにも合致した案件になり、自分たちのスキルアップにもつながります。この良い循環をつくっていきたいんです。

受発注の関係ではなく、共創しながら良いサービスを生み出し、クライアント自身がトランスフォーメーションしていくきっかけもつくりたい。ゆめみの事業の根幹にある考え方はBnB2Cというビジネスのモデルだ。

━━工藤さんのような、クライアントとコミュニケーションをとる営業職の役割が重要になりますね。

そうですね。私自身、営業の仕事に携わってきましたが、やってきたことはマーケティングやプロデュースでもあります。営業には、さまざまなアプローチで見込み顧客を獲得し、関係性を深めていくマーケティング的な考え方も求められます。そして、クライアントの困りごとがわかってきたら、次はプログラマー、UXデザイナー、プロデューサーなどを集めて、現状のサービスの課題や改善点についてディスカションし、案件の受注へとつなげる。

さらに今度はカスタマーサクセスの観点から、開発や運用のプロセスにおいてクライアントの満足度を高めていくためのフォローをし、最終的にはユーザー目線で、提供すべきサービスのあり方についてクライアントの共感を得るためのコミュニケーションをとる。ゆめみの営業には、こうしたビジネス全体をプロデュースしていく気概が求められます。

━━ゆめみならそのトータルプロデュースのノウハウが学べる?

そうですね。我々は今でこそ、サービスデザイナーやクリエイターなど様々な職種で構成されていますが、元々はエンジニア発の開発技術の会社というDNAがあり、営業もひとつの技術と定義しています。営業の職域が広がる中で、自分が得意な技術をクライアントに提供していくことがまずは大事ですし、技術を獲得するという観点では、交渉アナリストやウェブ解析士など営業職に活かせる資格の取得も推奨しています。営業でありながら、人間中心設計(HCD)スペシャリストと呼ばれる資格を取得しているものもいます。また、ゆめみには副業し放題という制度があるので、営業職にしても副業を通して自分に必要な手法論・技術を学び、ゆめみの仕事に活かせますし、本人と会社双方にとってプラスになると思います。

工藤の手帳には、ゆめみの自社サービスとして立ち上げたSprocket、Nailbookのステッカーが貼ってある。いまは分社化し、それぞれもまた、成長しているという。

「変わり続けていること」こそ、ゆめみの変わらないDNA 

━━事業や組織が変わる一方で、創業時から変わっていないことはありますか?

はい。ひとつは、世話焼きな人が多いということですね。例えば、社内のコミュニケーションにはSlackなどが使われていますが、わざわざ異なるフロアにいる社員の様子を見に行ったり、Slackで送った内容を口頭で補足するなど、オフラインのコミュニケーションに気を遣う人が多んです。過去には人事担当が各社員に毎月野菜を手渡しで配るような取り組みもあり、こうした姿勢は一貫しています。

もうひとつは、常に「変わり続けている」ということだと、個人的には感じます。

━━「変わり続けていること」が、ゆめみの変わらない部分だと。

私たちが大切にしているのは、ポジティブに変化し続けることです。それを成長とも言い換えられますが、ゆめみでは自分たちの言動を通して、社会やクライアント企業、あるいは生活者などにポジティブな変化を与えるとともに、社員一人ひとりが成長できる会社であることを目指しています。

外部環境が不確定な時代だからこそ、生き抜くためには変わり続けること、成長し続けることが必要ですし、自律性を持って柔軟に変わっていける思考を常に持っていたいと考えています。

━━変わり続けるために心がけていることはありますか?

京都で学生ベンチャーとして創業したゆめみには「やる人が決める」の精神があって、多少の怪我なら学びや成長につながると考え、社員一人ひとりが裁量を持っています。変化を続ける上で前提になるのは、恐れをなくすことです。「ゆめみ」という社名には、夢を見つける(=夢見)、実現させる(=夢実)という2つの意味があるのですが、仮に最初は変化への恐れがあったとしても、夢を見つけ、実現させるためにトレーニングをすれば、恐れは克服できるはずだと思っています。

━━工藤さんご自身の夢は?

まだ見つけている最中です(笑)でも、そのプロセス自体が楽しいじゃないですか。常に自らが「ゆめみ」の状態であることが大切だと考えています。例えば、事故や身内の介護や看病といったライフイベントが起こっても、夢を見つけるプロセスが脅かされたり、自分の成長や変化が停滞しないように、高額医療費負担制度や有給取り放題制度などをつくり、いつでも夢を見つける状態に戻ってこられるように人事制度を運用しています。

━━BnB2Cの考え方、学べる環境や「世話焼き」の社風などが相まって、個々の成長や変化が促されているのですね。

はい。ゆめみは自分の興味がある分野のスキルを常に研鑽できる場所だと思います。私自身の中核にあるのは成長で、自分を磨くことでクライアントのビジネスの成長を手助けしたいし、そこで得た経験やお金を、家族や友人、あるいは地元など周囲の成長につながるものに還元したいと考えています。ゆめみ自体もそうした成長のサイクルを回せるコミュニティになるといいですし、それは「変化を続ける」という会社のスタンスともつながります。

実は私は、個人的に「1億総ゆめみ化計画」というものを妄想しているんです(笑)。例えば副業で月に1時間だけ当社の仕事をしている人にも「自分はゆめみのメンバーだ」と自覚してもらえるような企業になりたい。そして、コミュニティの規模が大きくなることで、ユーザーが満足してお金を払えるアプリやサービスが増え、それが結果的に経済の発展にもつながるはずだと考えています。

  • TEXT BY 原田優輝
  • PHOTOS BY KOBA
  • EDIT BY 谷瑞世(BNL)
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