レガシーシステムの壁を越えていく。アクセンチュア テクノロジー コンサルティングは、金融業界の基幹系システムを変革する

テクノロジーの急速な進化と既存システムの老朽化・複雑化により、大きな転換期を迎えている金融業界。デジタルトランスフォーメーション(DX)で部分的に業務を効率化するだけではなく、レガシーシステムを刷新することが求められている。

「アクセンチュア テクノロジー コンサルティング」の金融サービス領域は、業界全体のDX・グローバル対応を推進し、深い知見が求められる基幹系システムの変革にも取り組んでいる。金融業界のITコンサルティングの専門家として活躍する、アクセンチュア株式会社 テクノロジー コンサルティング本部の松濤真人へのインタビューを通じて、金融システムの課題と提供する独自のソリューションに迫る。


金融業界の再建に挑みたかった

──まず、これまでのキャリア変遷について聞かせてください。松濤さんは新卒でアクセンチュアに入社したと伺っています。なぜ、御社を選んだのでしょうか。

金融業界を立て直したかったからです。2000年前後の学生時代は、不良債権問題で大手銀行の合併が進み、政府から多額の税金が注ぎ込まれていました。国民からの信頼が失墜し、「銀行員の給料はなんでそんなに高いのだ」とバッシングされていたような社会状況です。かつての金融バブルの時代も知っていたので、わずか10年でここまで信用が落ちてしまうのかと怖さを覚えていました。それと同時に、金融の世界を立て直すことは難しくても、何らかのかたちで業界へ貢献できないかと考えていたのです。

就職活動でメガバンクから内定をいただいていたのですが、銀行員としてのキャリアや5年後10年後の未来が見えすぎていることに、面白みを感じませんでした。それよりも、金融業界の再建にチャレンジ精神を持って取り組みたいと思い、アクセンチュアへの入社を決めました。

松濤真人(まつなみまこと)
テクノロジーコンサルティング本部 金融サービスグループ日本統括 マネジング・ディレクター
テクノロジーコンサルティング本部における金融業界全般を統括。15年以上にわたり、証券会社を中心にシステム開発案件・アプリケーションアウトソーシング案件・アウトソーシングディール組成に従事。直近では、メガバンク・証券会社を中心にデジタルトランスフォーメーション案件やグローバルソリューション導入案件など、複数のエンタープライズアジャイル案件を担当。

──入社後は、どのような業務に携わってきましたか。

入社してから約20年間、金融業界の案件に関わり続けています。最初のころはシステム開発を進めるプログラマとして、お客様と話すこともなくひたすら設計書を書き、プログラミングとテストを繰り返していました。その後、証券会社を中心にシステム開発やアプリケーションアウトソーシングなどに従事。直近では、メガバンク・証券会社を中心にDX案件やグローバルソリューション導入に携わっています。

若い頃のプログラミングの経験は、現在のテクノロジーコンサルティング本部の業務に活かされており、案件全体を統括しながらも不明な点があればソースコードやシステムの中身をすぐに確認できます。

──テクノロジーコンサルティングの強みは、どんなところにありますか。

コンサルティングファームとしての豊富な知見を発揮できることが大きな強みだと思います。アクセンチュアに蓄積している情報を活かしながら、お客様により良い方法や解決案を提案し、社内のプロフェッショナルを実働部隊にアサインして開発を進めていきます。現場に近いところでチームを組み、迅速に改善を進められることも大きな特徴です。

大手SIerは下請け会社に業務委託してシステム開発を進めていきますが、アクセンチュアは全体の9割ほどを内製で行っています。オフショアも含め、開発メンバーがコンサルティングのマインドを持っているので、コスト削減にとどまらないビジネス価値を創造できます。

また、コンサルティングを担当しているメンバーのなかにも、元々テクノロジーに携わっていた人が多く在籍しています。そのため、開発とコンサルティングの垣根がほとんどありません。お互いの領域をミックスしながら進めていくので、コンサルティングからテクノロジーへの移行が極めてスムーズです。お互いの働き方も理解しているので、高い相乗効果を生み出しながらプロジェクトを推進できます。

基幹系システムの危機。これ以上先延ばしにできない

──クライアントから寄せられる課題や業界の潮流について教えてください。

30年ほど前から金融機関が取り組んでいるのは、紙ベースの業務をデジタル化することです。他の業界に比べてシステム導入のタイミングが早く、多くのトップエンジニアが金融機関で働くことを夢見ていた時代です。しかし、2002年にメガバンクで大規模システム障害が起こり、「障害だけは起こさないように」という危機意識が業界内に芽生え、新たな技術を使うことが敬遠されるようになりました。その結果、安心安全の技術に頼るようになり、デジタル化が停滞する悪循環に陥っていったのです。

しかし、技術の革新的な進化と共に4~5年ほど前からデジタル化が再び叫ばれるようになりました。できるところから変えていこうとする流れに変わり、例えば営業や事務が使うタブレット操作をDXで刷新しています。10〜20の画面を操作する必要があったのが、数クリックで完結できるようになりました。他にも、カスタマイズを考慮した新たなシステム導入が進められています。

その一方で、システムの中枢にある基幹部分をどうするのかという問題が、2020年頃から注目されるようになりました。金融機関の基幹系システムは、古いプログラミング言語で構築されており、シニア・エンジニアの手により何とか維持されてきたものが大半です。経済産業省が指摘している「2025年の崖」を間近に控え、「これ以上先延ばしにできない」という危機意識が急激に高まってきたのです。

──なるほど。

危機意識については年代層や役職で異なるのですが、特に責任のある立場の人はとにかく失敗したくありません。トラブルを起こさないことが第一なので、不安を感じながらも自分の任期中にシステムを変えたくないのが本音です。

一方、30代で金融機関のITを担当している人は、金融機関の盤石な基盤を信じられず、スタートアップの新しいサービスに取って代わられるという恐怖心があります。システムを変革する必要性を漠然と感じているものの、今まで大手SIerに任せきりにしていたため、自分たちが先頭に立って変革するスキルを持ち合わせていないのです。

スキルを身に付けようと意欲のある人は既に着手していることもありますが少数派です。全体でみると、危機意識はあるものの、どうすればいいかわからない人が大半です。組織として良くない状況に陥っており、「金融機関を何とかしたい」と感じる場面が増えてきたように感じています。

クライアントの対話で、理想と現実の折り合いをつけていく

──今までどのようなデジタル変革に取り組んできたのでしょうか?

印象的だったDXの事例は、ある銀行のデジタル変革です。具体的には店舗内にタブレットを配置し、複雑で時間がかかる銀行手続きをタブレットで完結できるようにしました。結果、顧客体験の向上だけではなく、多くのバックオフィス業務の削減にも成功しました。受付業務では、テラー(窓口係)がお客様から伺った用件に対して後方事務が処理を行う「二線処理」と呼ばれるスタイルが広く採用されていますが、紙ベースの事務処理では時間がかかります。それを目の前のタブレット上で完結させ、業務効率化に成功したのです。

また、あるデジタルバンクでも既存ビジネスの制約を受けずに一足飛びのDXを実現しました。最新技術で革新的なムーブメントを起こすという観点で、バンキングシステムをフルクラウドで構築し、生産性向上に寄与したのです。金融機関への規制が厳しい日本において、わずか18カ月で開業できたのは異例のスピードです。

ただ、多種多様な金融サービスを全てカバーできるかというと、一部の活用シーンでメガバンクほどの機能が備わっていないのが現状です。預金・振込み、納税など一般的な活用シーンに対応しているものの、小切手の入金、海外送金でのルート指定など複雑な業務に対応できません。それらの機能をメインフレームに盛り込むには、莫大な開発費と多くのエンジニアが必要になるからです。

──金融業界の課題解決に対して、難しさを感じることもあるのではないでしょうか。

私自身も現在、新プロジェクトをリードとしていますが、従来のDX案件と比べると難易度が格段に高いと感じています。巨大な基幹系システムは、様々な現行業務に紐づいた多くの機能に繋がっているからです。新たなプラットフォームにシステムを移す際には、新たなプログラミング言語に変換しながら各種のテストを行い、全体を設計し直す必要があります。現行のシステムを見ているSIerにも、全ての業務をカバーできているのかどうか判別しにくい部分があるので、膨大な時間がかかります。

今後数十年に渡って安定稼働し、メンテナンスしやすいシステムに変革することが求められていますが、アクセンチュアなら必ず実現できると考えています。私たちは既得権益を持たないので、古い技術に縛られることなく、挑戦心を持って新たな試みを提案できるからです。

──新たな基幹系システムの設計では、要件整理をどのように進めているのでしょうか。

実現に莫大な時間がかかることを、短期的に実現できると誤解されることが多いので、その調整に難しさを感じるケースもあります。例えば、メンテナンスのしやすさ、様々な機能のビルドイン、タブレットやAIからのアクセス、さらには自分たちでもシステムを一部設計できるようにしたい、など。場合によっては、プログラミングやシステムに関わる部分を自社で行えるようにしたいと希望されることもあります。

ただ、それらの要件を盛り込むことで、要件定義がとてつもなく複雑になります。システムをクラウド上に移し、言語を変換して正しく動くようにするだけでも気が遠くなる作業です。お客様が「途方もないことを言ってしまった」と途中で気付くこともあり、現実路線に戻していくような舵取りが必要になってきます。

その一方で、お客様のなかにはシステムを変革することで実現できる、新たなプラットフォームへの期待感があるので、モチベーションを大切にしながら進めることも大切です。理想と現実の折り合いをつけられるように、3年後、5年後、10年後など、段階的な変革を提案していくことも重要になってきます。

──金融領域の課題を解決する中で、何を意識していますか。

最善の解決策を提案しながら、お客様が業界のなかで良い方向に進めるよう自負・プライドを持って取り組んでいます。クライアントにとって、何が最適なのか考える必要があるので、金融業界やクライアントへの愛情がないと続けられないと思います。その気持ちがベースにあれば、お客様のことを自然と好きになりますし、事業を応援しようとする気持ちが湧いてきます。

組織のなかには、銀行や保険など特定の領域を好むメンバーがいるのはもちろん、金融にDXやセールスフォースなどのソリューションを掛け合わせて価値を最大化しようとするメンバーもいます。それらの取り組みを見ていても、金融業界をなんとかしたい、金融業界だからこそ面白い事ができるはずだ、という想いを持っている方が活躍しやすい組織だと感じています。

多様な人材の「強み」にフォーカスしていく

──テクノロジーコンサルティングの金融サービス領域では、どのような人材が求められているのでしょうか。

テクノロジーコンサルティング本部では、以前にも増して多様な人材が求められています。私たちの採用基準は、「これができないと駄目」というネガティブな見方ではなく、できるだけ得意なことや強みにフォーカスしています。アクセンチュア全体で、そのようにポジティブな価値基準を打ち出すようになったので、以前にも増して多様性が育まれやすい環境が形成されていると感じています。ジェンダーに偏りはないですし、それぞれの強みを発揮しながら活躍できます。

お客様からのニーズとして、グローバルなシステム開発が求められることも多いので、英語ができる人材にスポットが当たることも増えてきました。エンジニアがデジタル人材として注目されることもあります。

その中でも特に求められているのは、基幹系システムを変革する際に、お客様の深い課題を解決することに取り組めるジェネラリストです。お客様と苦楽を共にしながら、金融業界の課題を解決しようとするマインドを持った方に、ぜひジョインして欲しいと思っています。

とはいえ、スペシャリストがいないと難解な課題を解決できないので、計画から要件定義、デリバリーまでを担えるフルスタックエンジニアのニーズも非常に高いと感じています。スペシャリストとジェネラリストが、お互いを尊敬し合うような環境をつくっていくことが理想です。

キャリアパスとしては、金融機関のIT部門や子会社などで働いている方で、もっと別のシステム開発に携わりたいと考えている人が合っていると思います。「現職でやりたいことができない」、「やりたいことができるフィールドがほしい」という想いを持った方であれば、良い案件やポジションを用意できると思います。

──メンバーが多様化していくなかで、組織の規律や連帯感をどのように維持しているのでしょうか。

お客様に最大の価値を提供することが私たちのミッションなので、そのために組織として必要なこと、守るべきことは各メンバーがしっかりと意識しています。ルールでがんじがらめにすることなく、それを自然と実践できることがアクセンチュアの強みです。お客様のことを考えながらプロ意識を持って各案件に取り組み、プロジェクトが危機に瀕したときにはみんなで助け合います。

──今後、どのようなことに力を入れていきたいですか?

アクセンチュアはデジタル領域で市場を牽引し、各金融機関からもたくさんの依頼をいただいていますが、全社的な基幹系システムを大きく変革するところまではまだ到達できていないと感じています。そこまで高いレベルのプロジェクトに取り組んでいる会社は、まだ国内で数少ないと思うので、その実現にアクセンチュアが一番乗りしたいと考えています。競争の激しい領域で競合がひしめいていますが、今後の5年ほどで必ず実現していきたいと思っています。

  • TEXT BY 平原健士
  • PHOTO BY 黒羽政士
  • EDIT BY 田尻亨太(VALUE WORKS)
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