ただ面白いゲームがつくりたい──流動性が高いゲーム業界で、私たちがSEM&Oに在籍している理由

人材不足が叫ばれるデジタル領域において、特に人材の流動性が高いと言われているゲーム業界。より良い待遇・条件を求める転職希望者に対して、各社の中途採用が活発に行われている。そんなゲーム業界において、プログラマが定着する組織づくりに成功しているのが企業がある。SEモバイル・アンド・オンライン株式会社(以下、SEM&O)だ。

初代PlayStation®の時代から28年以上ゲーム開発を行ってきた経験とノウハウを武器に、クライアントへの開発支援業務を拡大。有名企業や大型ゲームタイトルの実績も豊富で、社内のプログラマが多数活躍している。自社の人気ゲームタイトルにも注力し、「持続可能な成長サイクル」を構築していることが強みだ。

なぜSEM&Oのプログラマは勤続年数が長いのか。在籍年数15年を超えるプログラマーの菊池裕介、田中翔太、そしてゲーム開発事業を牽引してきたエンタテイメント事業部 取締役・尾崎耕平へのインタビューを通じて、業界の変化にかかわらず常に仕事を楽しめる開発環境に迫る。


28年前から揺るがない、ゲームづくりへの想い

——まずは会社の成り立ちについて教えてください。

尾崎 耕平(以下、尾崎):インターネット黎明期の1995年に、出版ビジネスを中心に手がける翔泳社(現:SEホールディングス・アンド・インキュベーションズグループ)の一事業部としてスタートしています。初代PlayStation®の頃には少ない人数でゲーム開発を手掛け、一部のプログラマと未経験スタッフでグラフィックから音楽まで全て制作していました。手探りで自社ゲームタイトルを作ってリリースした頃から、当社にはインディペンデントな開発精神が宿っています。

2006年には、前身の株式会社翔泳社から戦略的子会社として分社化され、単独で拠点を構えるようになりました。私たちエンタテイメント事業部は、「自社ゲームタイトルの開発・運営」および「クライアントへのゲームプロダクト開発支援」という二つの領域を手掛けています。

以前はゲーム開発を一式受注することも行っていましたが、対外的なビジネスに関しては現在の開発支援業務にシフトしています。この切り替えによってクライアントへのサービスレベルの向上と、安定的な売上が見込めるようになりました。年間の利益計画も想定できるようになり、その利益を自社ゲームタイトルの原資に充てることが可能になったのです。開発体制は変わりましたが、「面白いゲームをつくりたい」という想いは、当時から何も変わっていません。

尾崎 耕平
SEモバイル・アンド・オンライン株式会社 エンタテイメント事業部 取締役。同社が分社化する前の株式会社翔泳社に入社し、デザイン局で勤務する傍ら、はじめてソフトウェアの受託開発を経験。その後ゲーム開発の事業立ち上げに参加、同社の分社化と共に取締役に就任、エンターテインメント事業部の責任者となる。

——ゲーム業界における開発のトレンドとプログラマを取り巻く環境の変化について、どのように感じていますか。

尾崎:以前は、大手数社の家庭用ゲーム機が主流で、それらの企業で決められたプログラミング言語・レギュレーションに則って開発を進めていました。ハードウェアの規格をそれらの企業が管理しているので、そこで決められたルールでプログラミングすることが多かったのです。プログラマには各ハード別に必要な部分を1から開発していることが多かったです。

しかし、現在はスマートフォンをはじめ様々なハードウェアがあり、マルチプラットホーム開発のニーズが増えています。その開発を簡略化するために、各プラットホームの共通の処理やゲームに必要な基本的部分の処理をUnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンを利用する開発で行うことが増えたため、プログラマはプログラミング能力やその理解を求められることは変わりませんが、実際のプログラム以外に、そういったゲームエンジンを以下に効率よく使っていく事ができるかということも求められる時代になっています。

——自社ゲームタイトルの開発・運営では、どのようなジャンルを手がけていますか。

尾崎:主にカジュアルなゲームを得意としています。特に2010年にリリースした『ハッピーベジフル』は10年以上の運営実績があり、未だに多くのファンから愛される人気コンテンツです。農園で野菜や果物を育て、デコレーションして楽しむオンラインゲームで、ユーザーに求められる機能拡張を続けてきました。

また、スマートフォン向けアプリで提供しているRPGゲーム『毎⽇こつこつ俺タワー』も根強いファン層に支持されています。UIの改善を続けながらPCブラウザ版でもサービスを開始。Twitterなどのコミュニティで活発にコメントされる注目コンテンツに成長しています。

ホワイト化が進んだゲーム業界の働き方

——これまでのキャリアと現在の業務内容について教えてください。

菊池裕介(以下、菊池):専門学校のインターンで当社のゲーム開発事業に携わるようになったのがきっかけです。業務委託の時代から数えるとSEM&Oでの在籍期間は20年を超えます。参画当初は受託開発のプログラマーをしていましたが、現在はクライアントへの開発支援業務を担当。開発プラットフォームはスマホのアプリゲームからコンシューマーゲームまで多岐にわたります。

今ジョインしているプロジェクトは、大手ゲーム会社のソフト開発です。私が主に担当しているのは通信対戦の部分ですが、そのほかにもUI関連の開発も担当。直近の業務ではUnityを使ったプロジェクトが多いですが、Unreal Engineを使うこともあるので新たなインプットを増やすようにしています。

菊池 裕介
SEモバイル・アンド・オンライン株式会社 プログラマー。専門学校でゲーム開発を学び、インターンから同社にジョイン。自社コンテンツの開発に携わった後、現在はクライアントの開発支援で実績を積んでいる。プログラマーとしての経験は20年以上。

田中翔太(以下、田中):私も当社に15年以上在籍しています。最初の5年間をフリーランスで契約し、その後は正社員として勤務。サーバーのプログラマとコンシューマーゲームの開発を経験し、現在はクライアントの開発支援を担当しています。

2007年にジョインしたときはオンラインゲームがほとんどなかったので、コンシューマーゲームの開発業務がメインでした。その後、mixiなどの人気に伴ってサーバー系の仕事が増え始め、スマートフォンが普及することによりさらに稼働量が増えています。時代と共に担当業務が変化していくのが、私たちプログラマーの働き方の特徴かもしれません。

田中 翔太
SEモバイル・アンド・オンライン株式会社 プログラマ。専門学校を卒業後、同社のプロジェクトにジョイン。自社コンテンツのスマホ向けカードゲーム等に携わった後、現在はクライアントの開発支援を行っている。プログラマとしての経験は15年以上。

――入社時から現在までを振り返って、働き方はどのように変わりましたか?

田中:当社というよりゲーム業界全体の働き方が、以前と比べると大きく変わってきていると感じています。2010年頃までは緊急対応で泊まりになったり、休日出勤になったりすることが、案件によって度々ありました。しかし、「働き方改革」が声高に言われだした2015年前後から、世の中の動きに合わせてゲーム業界も大きく変わり、働き方のホワイト化が進みました。

菊池:私自身も各社の開発に携わるなかで、無茶な働き方がなくなったと感じています。各案件の労働条件が見直されたことにより、昔のように休日出勤や残業が気軽にできない開発環境になったのです。法制度に守られていることもあり、時間内に作業完了することが、どの案件でも当たり前になってきています。

――効率よく働けるようになったということですね。仕事の醍醐味を感じられるのはどんなときですか?

菊池:ゲーム業界は時代と共に変化していますが、一つひとつの機能をつくり、自分もいちユーザーとして完成したゲームをプレイできる楽しさは、昔から全く変わりません。「つくったものが動く」というプログラマーの面白さを現在も感じられます。完成前に中断してしまうプロジェクトも中にはあるので、リリースされたときの達成感は余計に大きいです。

今までの仕事で特に印象的なのは、自分がメインプログラマとして完成させた、Bluetooth通信対戦ゲームです。当時の社内では初めての取り組みだったので、緻密な試行錯誤を重ねる必要がありました。例えば、端末を2台用意して対戦同期するタイミングを連日調整したり、デバック作業で泊まり込みになったり。無事にリリースして一般ユーザーに届けられたときには、これ以上ないほどの充実感がありました。

田中:ソーシャルゲームが全盛になってから仕事の達成感が、少し変わってきたかもしれません。スマートフォンなどのオンラインゲームは、コンシューマーゲームのようにリリースが完成ではありません。開発が終わってからも、ユーザーの反応を見ながらアップデートを続けていく必要があります。

ただ、SNSやWeb掲示板でユーザーの声が届きやすいのは、私たちプログラマーにとって良いことだと思いますね。どんなところを気に入ってくれたのか分かるので、コンテンツ改善やモチベーションアップに繋がります。

大型タイトルで成長できる仕組み

――人材の流動性が高いゲーム業界において、みなさんはSEM&Oに15年以上在籍しています。その理由はどんなところにあるのでしょうか。

田中:SESの業務において、有名タイトルや数百人で開発しているような大規模案件を数多く経験できることが、仕事のやりがいに繋がっています。社内には、有名なロボットゲームを手掛けているメンバーや、超有名タイトルのグラフィックを担当しているメンバーもいます。他のプログラマーから刺激を受けることが多く、色々と勉強になりますね。

菊池:私の場合、最初の頃は自社コンテンツを主に担当しており、他社の開発環境を見る機会がありませんでした。しかし、その後クライアントの開発支援で経験を積むなかで見えてきたことが色々あります。会社によって進め方が違うので、学ぶことが多いですね。

昔の方が働く上での大変さはあったと思いますが、自分の中ではそれが楽しい記憶として残っているんです。乗り越えたときが楽しいという意味では、部活動や文化祭、あるいは山登りにも感覚的には近いのかもしれません。尊敬できるメンバーが多いので、互いに協力しながらここまで登ってきたように感じています。

尾崎:「面白い仕事が好き」という志向が、当社のメンバーには共通していると思います。時にはつらいこともあるので、正確にはただ「おもしろい」ではなく「おも“つ”らい」くらいのニュアンスですが(笑)、当社は自社サービス含め、ゲーム業界の様々な開発現場に携わることのできる醍醐味がありますので、色々な現場でエンターテインメントの世界の楽しさを感じられると思います。

――人気コンテンツや大型タイトルを次々と受注できる理由を教えてください。

尾崎:ひとえに当社のスタッフのスキルが高いことに起因していると思います。他の企業が入っている場合も多いですが、いずれの案件でも当社のスタッフのスキルがしっかりしているからこそ、毎回選んでいただけるのではないかと。とはいえ、人と人が作業する現場なのでトラブルをゼロにすることはできません。開発現場で要求されるスキルをさらに高められるように、プログラマーへのサポートとバックアップ体制をしっかり構築しています。

中途のプログラマーに関しては、SESで先方企業との間にトラブルがあった場合には、原因特定のために私や責任者が間に入ります。要因は様々で、本人のスキルの問題もあれば、コミュニケーションの問題だったりすることもあります。しっかり本人にフィードバックし、スキルアップできるように見ていくので、SESでも決して本人任せにせず最後まで責任を持ちます。

菊池:プロジェクト責任者の存在は、私たちプログラマーにとって非常に心強いですね。トラブルが起きたときには、先方企業との間に“緩衝材”として必ず入ってくれます。冷静にクライアントへ経緯を説明してくれるのはもちろんですが、同じ失敗を繰り返さないための振り返りとネクストアクションの設定を私たちに促してくれます。

プログラマーの選択肢を増やしたい

――プログラマーの視点で働きやすさを感じるのはどんなことですか。

菊池:在宅勤務制度を導入し、80%ほどの社員がリモートワークを既に実践しているので、プログラマーが自宅など集中できる環境で作業を進められます。様々なツールを駆使して、対面と変わらないコミュニケーションも実現できています。責任感を持って業務に励むことができれば、場所や時間に関係なく高いパフォーマンスを発揮できると考えています。

田中:社員の意見を参考にしながら、いくつか福利厚生制度も新設されています。例えば、新たなスキルを習得するにあたり、本人が希望する外部講習などの費用を一部会社が負担する「チャレンジ応援制度」。他にも、自己研鑽のために投資するものに対して、毎月3,000円を上限に費用補助を行う「エンタメ補助制度」もあります。

尾崎:プログラマーが将来のキャリアプランの選択肢を増やせるように、新卒の教育アドバイザーとして携わってもらうポジションの創設も進めています。クライアント開発支援などで経験を積んでから、キャリア転換として利用していただければと考えています。数々のゲームタイトルで得られた知見やノウハウを若手に伝えられるように、社内でしっかりと仕組み化していきます。

――最後に、これからのSEM&Oでどんな人と一緒に働きたいのかを教えてください。

田中:当社はフロンティア精神で成長してきた会社なので、粘り強くモノづくりに取り組める人であれば、当社のカルチャーに合うのではないでしょうか。ゲーム好きが集まっているので、一緒にプレイすることですぐに打ち解けられると思います。

菊池:日々の業務に関しては、SESで色々な企業に行くことも多いので、新たな環境を楽しめるマインドセットが求められます。成長意欲のある方と持続的に各案件に取り組んでいきたいと思っています。一般的にSES事業だけの会社はプロジェクト終了で仕事がなくなることもありますが、当社は他のサービスも手掛けているので長期にわたって安定して働くことができます。

尾崎:個人の成長はもちろんですが、チームや事業部を一緒に育てていくことに楽しみを感じられる人が、現在のフェーズには合っているのかもしれません。私たちはゲーム業界で28年以上の実績を持ちますが、新たな取り組みをスタートさせたのは数年前で、第2の成長期だと思っています。

今までの技術スキルや経験をもとに、クライアントへの開発支援業務を拡大し、自社ゲームタイトルのさらなる成長を目指していく。この「持続可能な成長サイクル」の取り組みに共感してくれる方に、ぜひジョインして欲しいと考えています。

  • TEXT BY VALUE WORKS
  • PHOTO BY 黒羽政士
  • EDIT BY 小田川菜津子(Eight)
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