組織のゴールを見据えて、必要なトレーニングを提供。ヴイエムウェアのセールス・イネーブルメントは「学び続ける」カルチャーを支える

サーバーの仮想化やクラウドテクノロジーで世界的なシェアを持つアメリカ発のグローバル企業、ヴイエムウェア株式会社(以下、ヴイエムウェア)には、誰もが常に学び続ける文化がある。それを支えているのがEnablement Cousultantだ。日本では昨今、「セールス・イネーブルメント」という概念が注目されているが、同社にはセールスのみならず、SEやパートナー担当など、職種ごとにイネーブルメントの専任担当者がいる。同社の人材育成の仕組み、いま特に重視されているスキルについて、Sales Enablement Cousultantの宮澤愛帆に聞いた。


職種ごとに専任の担当がトレーニングを提供

——宮澤さんはどのような経緯でセールス・イネーブルメントの職に就いたのでしょうか。

大学卒業後は外資系IT企業に入社しました。カスタマーエンジニアとしてお客様のサーバーの保守と運用サポートを経験し、3年経つ頃にその後のキャリアについて考えたんです。すごく働きやすくて良い会社ではあったのですが、大きな会社ですからあまり自分の意見が求められることがないと感じていました。そこでヴイエムウェアに転職した先輩に、「もっと自分の意見を求められるような、成長を実感できるような仕事がしたい」と相談したんです。すると「セールス・イネーブルメントというポジションがあり、英語力も活かせるからどうですか?」と声をかけていただき、2019年にヴイエムウェアに入社しました。

宮澤愛帆(みやざわ・まなほ)
ヴイエムウェア株式会社 セールス・イネーブルメント 日本担当
新卒採用で外資系IT企業に入社しカスタマーエンジニア、システム運用支援業務等を3年間務め、2019年4月、ヴイエムウェア株式会社に入社。社内のハイタッチ営業向け人材開発・育成支援を担当。

——Enablementの業務内容について教えてください。

当社のセールス・イネーブルメントは、トレーニングやセミナー、ワークショップなどを提供する相手ごとに担当者が分かれています。私はセールス・イネーブルメントとして、大手企業を顧客として担当するハイタッチ営業のスキルアップを支援するグローバルのチームに所属しています。

単にトレーニングやセミナーを企画して受けてもらうだけではなく、会社全体および担当する組織のゴールを見据えてどういうアクションが必要なのか、営業であればその組織のトップである営業本部長などと話をして企画立案をし、実際のトレーニングのデリバリーを実施します。さらに実施後の効果なども確認してフォローアップをするまでが、私たちのミッションです。

——対象となるのは新たに入社された方々が中心ですか?

必ずしもそうとは限らず、内容によって対象は様々ですね。新入社員や社歴が浅い方に向けたものばかりではなく、社歴の長い社員が対象となることもあります。マネージャークラスや役員クラスも参加することがあり、そこは私も入社して驚いた点です。

お客様の戦略的パートナーとなるために必要なトレーニングとは

——トレーニングの内容で、特にニーズが高まっているものはありますか?

ヴイエムウェアはいま、ビジネスの転換期を迎えています。もともとはサーバーの仮想化からクラウドなどインフラを中心にマーケットを広げてきたのですが、その上のレイヤーであるアプリケーションなども含め、お客様のデジタル環境の全てをサポートすべく変わっていこうとしています。

そうなると、ただ製品を売るというよりは、お客様がITを使って何をしたいのか、何ができるのかを一緒に考えていかなければなりません。営業には、ITに限らないビジネスに関する課題をしっかりと理解し、当社が提供できる価値を提案していくバリューセリングのスキルが求められます。そこでセールス・イネーブルメントとしても、セールスのメンバーにお客様の戦略的パートナーとなっていけるようなスキルを身に着けてもらうということが重要なミッションになります。

——具体的には、どのようなトレーニングが提供されているのでしょうか。

まずはお客様の抱えている課題や背景にある問題を理解した上で、それを解決する方法を考え、私たちのプロダクトの価値を売り込んでいく必要があります。そのため、ITの専門家ではないエグゼクティブクラスの方々ともしっかりお話ができるように、単なる製品やソリューションの紹介に留まらない、「価値を伝えるための会話」という部分にフォーカスをしたワークショップを頻繁に行っています。関連して、ヒアリングした内容をきちんと資料に落とし込み、お客様に伝わる形でプレゼンテーションするために、資料作成やプレゼンテーションの研修もよく行います。

また、アプリやセキュリティなどヴイエムウェアにとっては新しい分野に関して、そもそもマーケットはどういう状況にあるのかといった基礎的なトピックのトレーニングも人気があり、マネージャークラスの方も参加者として話を聞いていたりします。

その他にテクニカルな内容の勉強会も定期的に開催するのですが、皆さん日々新しい情報が出てくる中でそれをどう吸収していくかという点で苦労されているように感じます。最初に受けたときには内容を十分に理解しきれないこともあると思います。ですので、開催した勉強会の録画などはきちんと情報資産として貯めていき、実際の業務の中で必要になったときにアクセスして学びなおすこともできるようにしています。

会社も社員も学ぶことの重要性を認識

——ヴイエムウェアでは、一人の社員がどのくらいの頻度でトレーニングを受けているのですか?

まず、毎クォーター必須でアサインしているトレーニングとして、オンデマンドで受けられるeラーニングのパッケージがあります。それがトータルで4時間くらいですから、1年で16時間ほどになりますね。それ以外には、必須もしくは任意参加のウェビナーやライブのセッションという形のトレーニングが四半期によって2〜3日あるほか、製品関連の勉強会などもあったりしますので、1人が年間で合計100時間以上を費やしていると思います。

——宮澤さんが企画や運営をするトレーニングも相当の数になりそうですね。

そうですね。オンデマンドやライブのセッションのほかに、社内の製品営業のスペシャリストが企画する勉強会のお手伝いなども含めると、四半期ごとに10〜20くらいはあるのではないでしょうか。

——会社としては、セールス・イネーブルメントという役割や社員の学びをどう位置づけているのでしょうか。

トレーニングの専任担当を立てていることや、トレーニングの豊富さなどから、会社全体のカルチャーとして「学ぶ姿勢」が根付いていると感じます。これは日本だけでなく、グローバルでも言える傾向です。例えば新しいマーケット戦略などを検討する資料などを見ると、セールス・イネーブルメントがその戦略をどう支えていくのかということが必ず入っています。セールス・イネーブルメントが、社員が変化に対応していくために重要なポジションだと認識されているのだと思います。

——社員の方も、学ぶことに積極的ですか?

はい。勉強会やセミナーには毎回かなりの方が参加しています。自分たちの扱う製品も、お客様を取り巻くITやデジタルの世界もどんどん変わっていく中、その変化についていくためにも学ぶことが重要だと、皆さん認識しています。

ヴイエムウェアには、セールス・イネーブルメントが提供するもの以外にも「Take 1/2/3プログラム」という制度があります。Take1プログラムでは、社外の研修を受けるための費用を年間5,000ドルまでサポートしてもらえます。Take2および3では、自分のキャリア開発に関わる社内プロジェクトに職務を離れて参加できます(Take2は在籍3年以上で最長2週間、Take3は在籍5年以上で最長3ヶ月)。

参加できるプロジェクトはグローバルでいろいろなものがあり、専用のアプリで参加の要件やそこで学べることが紹介されています。Take1を利用して外部研修を受けた人が2020年の1年間で250名近くいましたし、Take3を使って社内プロジェクトに参加し、そのまま異動を果たした人などもいます。

ヴイエムウェアらしいメッセージが込められたステッカーの数々。「学ぶ」カルチャーを支える宮澤の矜持を感じさせる。

トレーニングは社員同士のつながりを作るという意義も

——宮澤さんの入社以降、会社全体としてもセールスの組織としてもメンバーが増えていますよね。新しく入ってきた人たちの不安を取り除いたり、会社のナレッジを伝えていくためにどういった活動をされていますか?

新卒や中途で入った方に向けてのサポートも私のミッションのひとつです。入社したばかりのときは誰に何を聞いたらよいかわからないというのは皆さん同じですから、「セールス・イネーブルメントという、いつでも相談できるサポート役がいますよ」ということをお伝えする場を設けるようにしています。必要に応じて1対1でのミーティングもセットして、そこで、仕事を始めるにあたって必要なリソースは何かとか、困っていることはないかといったことをヒアリングしています。

また、特に最近はリモート環境で仕事をすることが増えています。提供されている情報はたくさんあるのですが、まだ自分に必要な情報も分からない中で混乱している方も多いようです。そのため、色々なところに散らばっている情報を一か所にまとめ、皆さんがアクセスしやすいようにするということに力を入れています。特にテクニカルな情報は英語のドキュメントしかないものも結構ありますので、できる限り日本語化していくということも進めています。

——セールス・イネーブルメントの仕事で、特に手応えを感じるのはどのようなことですか?

先に触れたバリューセリングのプログラムは、グローバルで6〜7年前から導入されていたんです。ですが、私が入った当初の日本ではあまり価値が認識されておらず、義務感で参加している方が多いような状況でした。

そこで前任の担当者と一緒に、まずは営業のリーダーたちに受けてもらい、価値を認識してもらった上で組織に展開していこうという取り組みをしました。実際にトレーニングを受けたリーダーたちには「この研修いいね」と理解してもらえ、それをどうやってフィールドに展開し、定着させ、みんながスキルとして使えるようにするかについて話し合うことができました。

単にトレーニングをデリバリーして受けてもらえば良いということではなく、組織のリーダーたちと一緒に将来像を描いていくことができたというのがすごく面白かったし、これからもそういう経験をしていきたいと思っています。

——研修を実効力のあるものにするためには、関係者を巻き込むことがポイントになるんですね。

そうですね。それと、最近になって参加者に言われてハッとしたのは、トレーニングが重要なコミュニケーションの機会になっているということです。このコロナ禍でなかなか会社にも行けず、入社したばかりでは知り合いを作るのも難しいという状況の中、「普段は関わりのないような部署の方とも知り合いになれました」という声もありました。情報のキャッチアップをしてもらうことはもちろんですが、社員同士のつながりを作るという点もトレーニングの意義なんだと感じています。

——今後、どのようなことに力を入れていきたいですか?

私はセールス・イネーブルメントの前はエンジニアをしていましたので、しっかりした営業の経験があるわけではないんです。ですので、自分がどのようにハイタッチ営業の組織やメンバーの役に立っていけるのかというところは日々模索しているところです。今後もフィールドのメンバーと一緒に学びを継続しながら、サポーターとしてだけでなく、自分から積極的に組織やメンバーのスキルアップにつながる提案をできるアドバイザーになっていきたいと思っています。

社員同士のつながりを作るという点もトレーニングの意義。これからは、サポーター的な役割から、自ら積極的にトレーニングの提案をできるようなアドバイザーになっていきたいと語る。

  • TEXT BY やつづかえり
  • PHOTOS BY 吉田和生
  • EDIT BY 瀬尾陽(Eight Career Design)