各企業のマーケティングシステムが細分化・複雑化する中、消費者の多様なニーズへの対応は年々難しくなっている。顧客体験を起点に企業のビジネス変革をリードする「アクセンチュア インタラクティブ」は、ビジネスの成長を切り開くパートナーとして、データ分析とテクノロジーを駆使して数多くの企業を支援している。
大手小売企業のEC事業成長に貢献する、アクセンチュア株式会社 インタラクティブ本部の江口恵、小村祐生へのインタビューを通じて、アクセンチュア インタラクティブが提供するビジネス変革、そしてシームレスな顧客体験の創出に迫る。
EC領域の実行段階まで支援する、アクセンチュア インタラクティブの強み
——まず、アクセンチュア インタラクティブはどのような組織か教えてください。
江口恵(以下、江口):アクセンチュア インタラクティブは、ビジネス全体の課題から始まり、エクスペリエンスの設計、システム構築、コミュニケーション、そしてどのように運用していくのかまで、お客様に伴走しながら支援しています。私たちは、その中でもマーケティングの実行領域にコミットしています。具体的には、ECサイトやデジタルコマースの最適化、コンテンツ制作やキャンペーンの自動化など、マーケティング・オペレーションモデルの設計や構築をしています。
最先端のテクノロジーを活用してコンテンツを最適化するだけでなく、必要とあれば組織・体制をも動かし、テクノロジー・ビジネス・クリエイティブの力を組み合わせて、クライアントが継続的にマーケティングで価値を出せるよう支援します。私たちが強く意識しているのは、「成果を創出すること」。戦略を描いて終わりではなく、実行してこそ成果は表れるので、施策の効果についても分析し、「次の一手をどうするのか」をお客様と共に考えることも多くあります。

アクセンチュア インタラクティブ本部 シニア・マネジャー。2018年IMJ入社、2020年アクセンチュア転籍。大手小売企業のEC事業成長のための、デジタル戦略・組織・マーケティング戦略・新規サービスなどを担当。セールスからプロジェクトマネジャーとして多くの企業変革をリードしている。
小村祐生(以下、小村):アクセンチュア インタラクティブはデジタルマーケティングとオペレーション領域を一層強化するために、2021年にIMJを吸収合併しています。IMJが培ってきたデジタルマーケティングの知見とアクセンチュアの豊富なソリューションを活かし、システム運用の段階まで支援できることが強み。「作って終わり」ではなく、実際のユーザーと接する面も持ちながら、中長期的な視点で伴走していきます。
お客様から寄せられる課題でも、デジタル領域の人材がいなかったり、中長期的なPDCAを回していくことが難しかったりといった、社内のリソース不足に起因しているものも多くあります。EC領域においてその傾向が特に強いので組織の中で強化プロジェクトを立ち上げて伴走を支援しています。

——では、コマース領域においてアクセンチュア インタラクティブの強みはどんなところで発揮されるのでしょうか?
江口:ITの部分では、アクセンチュアの開発力を活かし、オリジナルのECサイトやアプリを一から立ち上げることが可能です。最新のソリューションを組み合わせながら、「やりたいことを全て実現できる」ことがアクセンチュアの強み。汎用性の高い「ソリューション」と、各領域に精通した「スペシャリスト」の組み合わせで、他社にはない価値を提供しています。
小村:ネットストアを立ち上げるなどECサイトを新たに作る時には、一から独自に構築しなくても簡単に構築できるSaaS型のパッケージが多く存在します。しかし、それらのツールでサイトを立ち上げただけでは十分に機能しないので、その周辺のシステムをしっかり整理することが必要になります。コミュニケーションに関わる要件整理、顧客データの取得プロセス、それを分析する基盤など、広い視野で考えていきます。
デジタルマーケティングやDXの推進においては、アクセンチュア内にある様々な専門チームと密に連携を取りながら進めていきます。アクセンチュアは特定のソリューションに縛られることがないので、お客様の課題を解決するために最適な方法を常に選択できます。
プロジェクトの出発点は「どういうビジネスにするのか」
——各企業のEC事業を成長させるため、どんな取り組みを行っているのでしょうか?
江口:ECはあくまで販売チャネルの話なので、「どんなサイト(売り場)にするのか」ではなく、「どういうビジネスにするのか」が各プロジェクトの出発点になります。どのようにユーザーとコミュニケーションを取り、どんな価値を提供していくのか。売り場づくりとマーケティング施策は、それを実現する「手段」に過ぎません。ユーザー価値を最大化するための仕組み、社内体制、運用ルールを整理していくことが本質的には大切です。
小村:私たちは、「インタラクティブな顧客体験」でビジネスを変革していくことをミッションにしています。ユーザーの目線に立つことが重要であり、その根拠となるのは様々なマーケティングデータです。ユーザーの声が、次の施策を考える中で拠り所になることはもちろんですが、クライアントを動かすための「説得力」にもなります。というのも、このEC領域の改善は組織体制なども影響してなかなか進まないことが多いです。
——組織体制のどのようなことがボトルネックになりやすいのでしょうか?
江口:私たちが担当しているクライアントは大手企業が多いので、どうしても社内調整に時間がかかります。改革は早く進めたいのだけれど、承認プロセスが複雑で時間がかかるケースもあるので、待っているだけではプロジェクトが停滞してしまいます。そのため、PMOを立ち上げてクライアントに関わりながら進捗状況を把握し、主体的に推進するようにしています。
その過程でさまざまなことを任せていただき、「社員のような感覚で推進してほしい」と言われることもあります。単なる提案ではなく、社内調整も含めてクライアントと密に関わることを大切にしているので、「この部署で止まっているから、このメンバーに話してほしい」などの要望もいただきます。
小村:信頼関係を構築していく一方で、組織として自立自走できるように支援していくことも重要です。常にアクセンチュアがサポートするのではなく、社内のリソースでプロジェクトを推進できるような体制構築を目指しています。最初は私たちがPDCAを回したとしても、次の2周目からはクライアントに任せるなど、自立自走できる組織にすることが、本質的な価値提供につながると考えています。

アクセンチュア インタラクティブ本部 マネジャー。2019年IMJ入社、2020年アクセンチュア転籍。大手小売企業のEC事業成長のための、デジタル戦略・組織・マーケティングの強化プロジェクトで、PMO、顧客戦略、データ活用、UIUXなどを担当。
エンドユーザーへの価値を、クライアント以上に知り尽くす
——具体的には、どのようにクライアントに提案、実行しているのでしょうか?
江口:2019年のCOVID‑19は人々の生活・購買行動に大きな変化をもたらしました。デジタルでの変革がこれまでにないスピードで求められていると感じています。その中でも、ある大手小売業のEC事業におけるプロジェクトでは、経営が発表した「ECの売上を3倍する」という大きな目標を達成するため、いくつかのプロセスに分けて改善策を提案してきました。最初から大きな変革の提案は通りにくいので、初期段階では「Quick winとして3ヶ月で成果を出す」という短期的な提案をし、スピード感を最優先して施策を実行しました。
それをきっかけに信頼関係を構築し、CRMの領域、マーケティングの自動化、ECサイトやショッピングアプリの改革など、フロントエンドやマーケティングにおけるプロジェクトを任せていただけるようになりました。現在は、サプライチェーンや在庫問題、業務プロセスの改革といったバックエンドの支援も進めながら、OMOを起点とした新しいサービス開発など、新たな戦略設計の部分にも携わっています。
小村:マーケティング領域では、アクセンチュア インタラクティブでチームを組んで継続的に支援しています。システム領域についても、アクセンチュア テクノロジーと連携したチームを組んで、日々改善に取り組んでいます。IT側にアクセンチュアのSIメンバーが元々入っているケースも多いので、そのメンバーとも連携しながら必要な要件を整理し、なるべく迅速にシステムを実装できるように進めています。
——とは言え、クライアントの課題解決において、難しさを感じることもあるのではないでしょうか。
江口:そうですね。あるクライアントの例でいえば、プロダクトやブランドのコンセプトが明確で企業理念がしっかりしているため、「良いものを作り、好きな人に届けばいい」という風潮があり、新しい顧客の獲得が難しい状況になっていました。それがコマースの売上の成長鈍化にも表れていました。一定のファンを作り続けているものの、3倍の売上目標には遠く及ばないような状況となっていたのです。
このような課題を解決するためには、ファン以外にもオンラインで買ってもらう「きっかけ」を作っていくことが重要です。ECサイトやアプリなどのデジタル領域でも、リアル店舗と同じように快適な買い物を楽しめるよう、サービスそのものやデジタルならではの見せ方を生み出していかなければいけません。そこを私たちが支援していく必要があります。
小村:他のクライアントでも、私たちが顧客戦略を描き、コミュニケーションに落とし込むところまで推進することがあります。時にはシステムが結合されていなかったり、リアル店舗とオンラインのデータがバラバラに管理されていたり、様々な課題に直面することも。部署によっても考え方や優先順位が変わってくるので、課題・ロードマップの整理、その認識合わせにも注力しています。どこから着手できるのか、クライアントを巻き込みながら整理していくことが大切です。

——こうした新しい課題と向き合っていく中で、どうすればクライアントの信頼を得ることできるのでしょうか?
江口:やはり期待値を超えることですね。「契約にないからやらない」というマインドでは信頼を得られないし、本当の意味でクライアントに伴走することはできません。クライアントと同じ目線に立って、課題解決のための「必要な行動」をきちんと腹落ちさせてから実行していくことが大切です。それが信頼につながっていくのではないかと思います。
小村:現場では、「社員よりも会社の課題感を理解してくれている」と感じてもらえる場面が増えていると感じています。自立自走できる組織にしていくことはもちろんですが、そういう信頼感があるからこそ、任せてもらえる領域が広がっているのではないでしょうか。
私たちの仕事では、プランを提示して終わり、モノを作って終わり、ではなく、実行を支援し、それが売上につながったのかどうか検証まで実施します。ビジネスの成長に責任を持つのでシビアな側面もありますが、逆にそれが私たちのやりがいにもつながっています。
江口:私一人でクライアントの課題を解決しようとしても、当然限界があります。事業全体を把握し、各メンバーから様々な知見を得ながら協力し合う。メンバー同士の相乗効果を活かしてこそ、実現性の高い解決策を提供できるようになると信じています。
そのためアクセンチュア インタラクティブでは、スペシャリスト人材には専門的な知見やノウハウが求められます。例えば、UIUX、マーケティング業務自動化、コミュニケーションデザイン、サービス開発、KPIマネジメント、など各領域でそれぞれスペシャリストが揃っていて、システムにおいてもソリューションごとに専門家が数百名単位で対応できることが強みとなっています。
一方で、ゼネラリストには「どこを直せば売上が伸びるか」など、全体を俯瞰した「見極め力」が求められます。その上で、お客様に寄り添って事業の課題を見極めたり、必要なメンバーを集めてチームを立ち上げたりする「推進力」も必要なスキルです。
——最後に、アクセンチュア インタラクティブだからこそ挑戦できることを教えてください。
小村:現在は1を10にする取り組みが多いですが、デジタル領域の新たなサービスをつくっていきたいという要望はますます増えてきています。私自身も、アクセンチュアの幅広い知見やスキルを活かして、0を1にするような新たなサービスの立ち上げと事業化にも注力していきたいと考えています。
江口:アクセンチュア インタラクティブでは、チャレンジしたいという思いがあれば本当に何でもできると思います。これまで4社経験してきましたが、解決手段・アプローチに応じて新たな知見やスキル・チームが必要なら専門領域の人材をすぐに見つけることができます。アクセンチュアの充実したネットワークによって、戦略から実装まであらゆる領域をカバーできる総合力があるので「できないことがない」というのはこの会社の面白さだと思います。私たちのチームでは、ビジネス全体に携わることができるので、自分の視野を広げたいと感じている方にとっては最適な環境だと思います。

- TEXT BY VALUE WORKS
- PHOTOS BY 黒羽政士
- EDIT BY 瀬尾陽(Eight Career Design)