「面白がる」を仕事の指針に。ヴイエムウェアの女性部長が示すエンジニアとして生きるためのキャリア戦略

サーバーの仮想化やクラウドテクノロジーで世界的なシェアを持つアメリカ発のグローバル企業、ヴイエムウェア株式会社(以下、ヴイエムウェア)。古山早苗は、主力製品のベースとなる技術やこれから実用化が期待される先端技術を用いてソリューションを提案する部隊、クラウドプラットフォーム技術部を率いている。SIer、ITベンダーを経てヴイエムウェアに入り、プロフェッショナルな仕事を追求する彼女に、仕事を「面白がる」ことの大切さ、エンジニアというキャリアを続けていくためのコツを聞いた。


より根幹のテクノロジーに関われることと楽しそうな社風に惹かれて入社

――まずは、古山さんの現在のミッションと、これまでのキャリアについて教えてください。

私たちの部署には2つのチームがあり、ひとつは「VMware Cloud Foundation」というITインフラの構築・管理などに使われる製品の技術を担当、もうひとつは「エマージングテクノロジー(emerging technology)」と呼ばれる最先端の技術を活用したソリューションを担当しています。特定のお客様を担当するというよりは、新しいテクノロジーによってどのような価値をお客様に提供できるのかを広く考えていくような部署です。お客様に対してプレゼンテーションすることもありますし、他のチームの活動に協力することもあります。

私自身は、チームマネジャーとしてマネジメントをしながら、メンバーと一緒に提案活動もします。ヴイエムウェアに入社したのが2015年10月で、当時はソリューションアーキテクトという立場でした。製品の担当から始まって現在はソリューションへと幅が広がってきましたが、テクノロジーを軸にヴイエムウェアの価値を語るという仕事の本質は同じですね。

古山早苗(ふるやま・さなえ)
2016年10月にSenior Solution Architectとしてヴイエムウェアへ入社。SDDC関連ソリューションを担当。2018年にソリューションエンジニアチームの Managerとなり、クラウドプラットフォーム技術チームをリード。現在は、Senior Manager としてマルチクラウドとアプリケーションモダナイズに関するソリューションの普及に注力。

――なぜヴイエムウェアに入社したのですか?

前職は外資系のソフトウェアベンダーで、ITインフラに関わる製品を扱うことが多かったんです。それらはヴイエムウェアの製品が使われる環境を管理することが前提の商品だったので、より根幹のテクノロジーに近いところで働いた方が幅広い提案ができるんじゃないかと思ったことがひとつです。また、当時からヴイエムウェアの人たちともよく一緒に仕事をしていて、みんなが楽しそうにしていたことも大きかったです。とても雰囲気が良くて、いいなと。

――取材前、古山さんが社員の皆さんとお話しされていた様子からも伝わってきました。山中直社長ともよくコミュニケーションをとられているそうですが、どのような期待を受けていると感じますか?

「VMware Cloud Foundation」のチームで担当しているのは、我々のクラウドサービスの根幹のテクノロジーです。そのことをきちんと理解して技術の進化を見ていくことが、お客様からの信頼を得続けるためにも重要だと思っています。

また、エマージングテクノロジーの方は、ヴイエムウェアにとってもチャレンジングな領域です。特に、今はアプリケーションの領域にもビジネスを広げていこうとしているので、その分野でのニーズが分かる人間が必要になってきています。

私はたまたまアプリ開発のバックグラウンドがあるのですが、会社の中ではまだまだ少ない。山中も課題と捉えているので、どうしていくべきか色々と対話をしています。ひとつの課題について、みんなで膝を突き合わせて相談する雰囲気のある会社なんです。ある意味「外資系」らしくない、ファミリーっぽさを感じています。

スピードの速い環境でチャレンジを楽しんできた

ーー古山さんは、ご自身の強みやスキルをどのように拡張されてきたのでしょうか?

最初はエンドユーザーの立場で、さらにその先のエンドユーザーのシステムを構築するという仕事をしていました。そこからSIerを経て外資系ベンダーに移り、いろいろな視点を持てたことは強みだったと思います。もちろん技術というバックグラウンドがあった上で、エンドユーザーや製品ベンダーの視点を持てたということが役立ちました。

ヴイエムウェアに入ってからは、より経営に近い層の方たちとお話をすることが増えました。そのため、自分の視点を引き上げざるを得なかった部分があります。特に今担当しているエマージングテクノロジーの分野では、今後の私達の“顔“になるような製品を、お客様のキーマンに訴求するという場面が増えています。視点を変えるという点で鍛えられましたし、様々な関係者とコラボレーションして進めていくスキルも磨かれたと思います。

ーーでは、エンジニアとして、ヴイエムウェアだから得られたと感じるものはなんですか?

入社前から「うちの会社はすごくスピードが速い。物事の決定も、結果を出すことについても、速さが求められる」と言われていました。

それをどう捉えるかは人それぞれだと思いますが、私にとっては楽しかったんです。スピードが速いというのは、どんどん色々なことにチャレンジする機会が与えられるということですからね。それも、絶対やらなければいけないということではなく選択できるというのが良かったです。速く結果を出さなければいけないからこそ、「もっとこんなことができますよね」という提案も聞いてもらえました。こちらからどんどん働きかけができるのは、ヴイエムウェアだからこそと言えますね。

自分から働きかければ、どんどん色々なことにチャレンジする機会が与えられる、古山がヴイエムウェアに惹かれた大きなポイントのひとつだ。

――「エンジニアである」というアイデンティティは大切なものですか?

はい。やっぱり技術に触れていたいですし、より面白いテクノロジーを使いたい。そして、自分だけで面白がるのではなく、いいテクノロジーをみんなに使ってもらいたいという思いが軸になっていますね。

エンジニアにもいろいろなタイプがいます。モノを作るタイプもいれば、それをどう売っていくかを考えるのもエンジニアです。私の場合、プリセールスやセールスエンジニアと呼ばれる立ち位置になります。お客様とお話することがメインの仕事ですが、技術のことを知らないと言葉に重みが出ませんし、説得力がありません。やはりエンジニアリングについて学び続ける必要があると思っています。

ーー「エマージングテクノロジー」という担当領域は、古山さんの興味関心にも合っていそうですね。

そうなんです。ヴイエムウェアに入って、まさに最先端の研究開発をしているメンバーに、メールやSlackで気軽に「これってどうなの?」と聞けるようになりました。ソフトウェアベンダーとして世界第5位の売上を上げている会社でこんなふうに現場にアクセスできるというのは、すごく恵まれている環境と思います。そうやって得た一次情報を自分で解釈して、お客様にどんな価値を提供できるだろうと考えられるのは、とても楽しいことです。

女性のエンジニアがいることが当たり前の状態にするために

ーー世の中のエンジニアにおける女性の割合は低い状態です。「女性がエンジニアとして働くのは難しい」という先入観を持つ方もいますよね。その点について、どう思われますか?

私の経験では、女性だということで良いことも悪いこともありました。例えば女性が少ないから覚えてもらえるとか、女性なりの視点を期待してもらえるといったことはメリットですよね。同じミーティングで同じだけ喋ったとしても、「あのミーティングに女性がいたよね」と記憶してくださることもあります。逆に言えば“悪目立ち”するということでもあり、ただ目立つだけでなく結果を出していかないと厳しい評価をもらうこともあると思います。

ただ、それを気にしている自分のマインドの方がよほどバリアになるんじゃないでしょうか。家族が「やめておきなさい」と言うからあきらめた、というような話も聞きますが、今の時代「女性だから」と気にしているのは上の世代だけかもしれませんよ。

女性がエンジニアとして働くことのメリットもあれば、“悪目立ち”するがゆえの厳しい評価を受けることある。「それを気にしている自分のマインドの方がよほどバリアになるのではないか?」、古山はそう問いかける。

ーー古山さんは、周りから反対されるということはなかったのですか?

反対はされたというより、むしろ選ぶことができた、という感じです。私は妹と弟がいるのですが、保育士だった母は3人のうち誰かを保育士にしたかったみたいです。だから、全員にピアノを習わせました。一方、父はエンジニアで、彼は彼で私たちにエンジニアリングの面白さを伝えようとしたんでしょう。父が正解だったのは、ゲームで釣ったんですよね(笑)。その結果、私たちはエンジニアになることを選びました。

そんなことを振り返ると、やりたいと思ったらやれる環境にすることが大事ですよね。例えばヴイエムウェアでも、女性だからといって入社のハードルを上げるべきではないし、逆に下駄を履かせるようなことも必要ない。一個人として見るべきだと思います。

でも、こういう話をしている時点でまだ当たり前にはなっていないわけです。女性もいるのが自然、という状態になるまでは、意識的に環境を変えていかないといけませんね。だから私は、「皆さんの娘さんが入りたいと思う会社、入って欲しいと思う会社にしないといけませんよ」と、よく言っています。

ーーエンジニアとして働いていくことに迷っている女性に伝えたいことはありますか?

いま、女性エンジニアに来てほしい会社はたくさんあるはずです。でも、女性の側のバイアスが邪魔していることもあるんじゃないでしょうか。考え方を変えればもっと楽になるよ、と伝えたいですね。

私もSIerにいたときは昼も夜もないくらいに働いていて、ずっとその働き方を続けなきゃいけないと思っていました。当時はシステムエンジニアという職種が全てのように見えていたんですよね。でも、エンジニアを続けたいと思えば他にも色々な仕事があります。私の場合、「製品を売るというベンダーの立場でエンジニアをやったらどうなるだろう?」というチャレンジをしたことで、今に至っています。結果、違う働き方でもエンジニアを続けることができたんです。

「この会社で働き続けるのは難しい……」とか「子どもを産んだら戻ってくる場所がないかもしれない……」と感じても、「戻るんなら何ができるだろう?」と自分なりのエンジニアの形を考えてみることが大事だと思います。

ーーヴイエムウェアの中で職種をピボットするエンジニアもいますか?

はい。男女関係なく、ライフステージの変化がなくても、自分のやりたいことが変わったり、チャレンジしたいことができたという理由で、エンジニアのスタイルを変えられます。うちのチームも、最初からソリューションアーキテクトだという人もいれば、以前はパートナーの担当だった人もいたりします。いろいろな人が集まって面白いチームになっているので、世の中全体としてもそうなっていくと良いと思いますね。

「面白がる」を指針に楽しく仕事をする

ーーでは、古山さんが仕事に向かい合う上で、大事にしていることを教えてください。

それはすごくシンプルで、「面白がる」ということです。私、本質的には面白いことしかやりたくないんです。やりたくないことや困難なこともあるかもしれないけれど、どうやったら面白がれるかを考えていかないと、1日の大半がつまらなくなってしまいます。

だから、楽しく過ごすために何をするのかというのが私の一番分かりやすい指針です。例えば、面白い技術をみんなに伝えるのも楽しいし、「うちの会社はなぜこんなテクノロジーを発表したんだろう?」と考えてみて、「そういうことだったのか!」と気づくのも楽しいですよね。「あっ!」という閃きは、パズルを解いたりゲームをクリアしたときの感覚にも近くて、きっと多くのエンジニアは楽しいと思いますよ。

だから、「世の中、そんなに簡単にはいかないんだよ」とネガティブな思考に陥ってしまっている人を見るのは少し辛いです。特に若いエンジニアが難しく考えすぎちゃっているのを見ると、とても心配になりますね。

「いま、なぜこのテクノロジーを発表したのか」、そんな疑問から事業の目指す方向や、さまざまなプロジェクトのつながりに気づくこともできる。面白いことに着目する姿勢がエンジニアという職業に深みをもたらすのかも知れない。

ーー壁にぶつかったり、悩んだりしている人に対して、古山さんが心がけていることはありますか?

コロナ前、みんながオフィスにいたときは、私たちのチームはいつもオープンスペースにいました。一見ダラダラと過ごしているような感じなんですけど、結果としていつでも話しかけやすい雰囲気が生まれていたと思います。何かあったとき、あそこに行けばスペシャリストがいて、そこで解決しなかったとしても分かる人につないでもらえるという安心感を提供できていたんじゃないかな、と。

今はオンラインでのコミュニケーションがほとんどになって、気軽に話しかけてもらうということが難しくなっています。だから、新しい仕組みや取り組みができたらいいなと思って。今、うちのチームに新たに入ってきたメンバーとは「早苗の部屋」っていうのをやっているんですよ。

ーー「早苗の部屋」?

はい(笑)。オンラインで業務上の会議やメンターとのやり取りをするだけだと、特定の人としか話さないですよね。だから2日に1度、私とその人と、もうひとり他のメンバーを呼んで3人で30分話すというのをやっているんです。

ーー2日に1度? 高頻度ですね。

そうですね。今は2週間ほど経ってチームのメンバー全員と話したところなので、次は関わりのある他のチームの人ともワイワイやろうと。そうすれば、オフィスで通りすがりに雑談をするような感じが出るじゃないですか。

そういう「通りすがり感」を生み出す活動として、社内で「猫部」というのもやっています。愛猫家の集まりで、Slackのチャンネルにそれぞれの猫の画像をアップして、仕事に疲れたらひたすらみんなで愛でるという(笑)。1年前に始めて、もう50人以上のメンバーがいるんですよ。

ーーそうやって、人と人をつなげることへのモチベーションはどこから来ているのでしょう?

その方が楽しいから(笑)。自分の知らない人同士がつながったり、自分の知らない情報を持っている人とつながれば視点が変わりますし、刺激があって、その方がさらに面白いことができそうだからだと思います。ヴイエムウェアのテクノロジーはお客様のシステムは安定稼働させるのが得意ですけど、不確かなものを恐れずに面白がれる人がどんどん増えていくといいな、と思いますね。面白い人が増えて、色んな人がいることを面白がれる会社になれば、それこそダイバーシティじゃないですか。

ーー最後に、古山さんが今一番面白いと思っているチャレンジを教えてください。

私はプロのジェネラリストを目指そうと思っています。ジェネラリストという言葉は悪い意味で使われることもありますが、本当の意味でジェネラリストであろうとしたら、めちゃくちゃ勉強しなければいけないし、切り替えも速くないといけません。そういう人であれたらいいなと思っています。そして、スペシャリストでなくても、エンジニアとして長く生きられるんだよ、というところを見てもらいたいですね。

具体的な仕事で言えば、アプリケーションのレイヤーにヴイエムウェアを取り入れてもらうということを広げていきたいです。世の中にはまだそういうイメージがないので、「ジェネラリスト=プロのプリセールス」として、「だからヴイエムウェアがアプリをやるのね」と皆様に納得してもらえるようなステージまでもっていきたいという野望を抱いています。

目指すのは真の意味でプロのジェネラリスト。スペシャリストでなくても、エンジニアとして長く生きられるというところを示していきたい。

  • TEXT BY やつづかえり
  • PHOTOS BY 吉田和生
  • EDIT BY 瀬尾陽(Eight Career Design)