働き方や働く環境を考えるメディア『WORK MILL』の編集長・山田雄介は、これまで国内外の多様な働き方をリサーチし、新しい価値観を提案してきた。そんな山田にとっての、自分らしい働き方とは?山田の“いいしごと”に欠かせない5つの愛用品とともに紹介する。
――山田さんは普段、どのような働き方をしていますか。
『「はたらく」の新しい価値を挽きだす』をコンセプトとしたメディア「WORK MILL」の編集長として、国内外のワークトレンドを取材、リサーチしたり、イベントに登壇したりといった仕事をしています。また取材、リサーチで得た知見を生かして、クライアントのオフィスコンセプト開発の業務にも携わることも。
そのため1年間の1/4ほどは、国内外のさまざまな場所へおもむき、取材、リサーチを行っています。日帰りのこともあれば、2週間以上の滞在になることもあります。
――山田さんにとって、自分らしく働くために必要な条件を教えてください。
「自然体であること」ですね。自分にとってなるべく違和感のない状態で長時間いられることが、“いいしごと”を生むと考えています。
自分の仕事の中心にある取材やリサーチ業務は、言い換えれば「違和感を探す仕事」。新しいこと、面白そうなことを、いかに見逃さないでいられるかが勝負です。そのため自分自身は、なるべく自然体でいることを本能的に求めているのかも知れません。
――違和感をキャッチするために、ご自身はニュートラルな状態でいるようにしているのでしょうか。
そうかもしれないですね。なおかつ私は、自分の体質、性質に合わせて、余計なものをそぎ落としていくことで、ベストなパフォーマンスを発揮できるタイプなんだと思います。
時間の使い方にしても同じ。睡眠時間は忙しくても確保しますし、毎日、10分でも目的を持たない時間を取るよう意識しています。昔からボーッとする時間が必要なんです。移動中はスマートフォンも本も開かず、ただぼんやりと過ごすよう心がけています。
山田雄介の“いいしごと”をつくるアイテム
1.999.9のメガネ
999.9(フォーナインズ)のメガネは、つけている感覚をほとんど感じないほど、かけ心地のいいところが気に入っています。
複数個のメガネを気分でつけ替えるタイプの人もいますが、私は1本をメンテナンスしながら使い続けるのが好きです。ファッションではなく、体の一部として使っているので、フレームを変えて視界が変わってしまうのが嫌で。
これは三代目で、使い始めて5年ぐらい。デザインが古くなったり、劣化を感じたりしたら買い換えています。
2.マンガ
『スラムダンク』世代なので、『少年週刊ジャンプ』系のマンガに親しんで育ちました。その延長で、いまも日常的にマンガを読んでいます。
目的は気分転換と、アイデアや発想を得ること。物語を通して「非日常感」「非現実感」に浸れるのと同時に、言葉選びやストーリー展開、構図や絵、デザインなどが1つのアウトプットとして参考になります。メディア作りやコンセプト開発の仕事に生かされていると思いますね。
3.Allbirdsの「Wool Runner-up Mizzles」
Allbirdsは、エコ素材にこだわったサンフランシスコ発のスニーカーブランド。2019年4月に発刊したビジネス誌『WORK MILL with Forbes JAPAN ISSUE04』の特集「愛される会社」で取材したのですが、その時に購入して以来、愛用しています。
ミニマルなデザインもさることながら、履き心地がとにかく快適。アッパーの素材はニュージーランド産のメリノウールがとても柔らかくしなやかで、1日中、ずっと履いていられるぐらい締め付けがない。軽いし、蒸れることもありません。
雨の日は素材的に避けますが、新幹線や飛行機などの長時間移動のときは、やっぱりこれ。足がむくんでも、違和感なく体の一部となってくれます。洗濯機に放り込んで洗える気軽さもいいですね。
4. Thermosの水筒(500ml)
もともと水分をたくさん取らないとダメな体質で、5〜6年前からマイ水筒を持ち歩いています。冷たいお茶が好きですが、健康を意識して常温の水を飲むときも。日中に一度はつぎ足して、仕事中だけで1L以上は飲んでいると思います。
以前はペットボトルを買っていましたが、時間が経つと温度が変わってしまうし、飲む量が多いので経済的じゃない。環境にもよくないと考えて、水筒を持つようになりました。
5.TIMEXの「アイアンマン」
ここ5年ほど、体の一部のように愛用しているのが、TIMEXのアイアンマン。もともとはデザインが好きで選びましたが、薄くて軽く、ぶつかっても気にしないで使える頑丈さが気に入っています。
外出時は、常に腕時計をつけています。ワンアクションで時間を確認できる勝手のよさが好きで。スマートフォンが出てくる以前から腕時計をつける習慣があったからか、時間を見るためにiPhoneを取り出して、タップして、というアクションが面倒に感じるんです。
働くうえで大切なのは、働く意味を自分で自分に与えてあげること
――山田さんは、日々“いいしごと”をするためにどんなことを心がけていますか。
いま取り組んでいる仕事が、自分にとってどういう意味、価値を持つのかを考えることですね。
所属している企業やコミュニティーにとって、その仕事が持つ意味ももちろん考えますし、社会や環境に対する意味づけも無視できない。ただ、私自身にとって一番大事なのは、自分にとって、その仕事が持つ意味を考え、働く意味を自分自身に与えてあげることなんです。
働く意味がない状態って苦しいです。その時々の出来ごとに都度自身で意味づけることで、いつまでも強い意志を持って働くことにもつながるのではないでしょうか。
――働き方の選択肢が増えているからこそ、自分自身による意味づけが必要になってきているのかもしれないですね。
もしかすると働く以前に社会で生きていくために、自分の行動を自身で意味づけられるスキルが必要なのかもしれません。特に先進国においては、経済的な理由以外に意味を見いだすことがいま問われている。それが働きがい、さらには生きがいにつながっているのではないか、と。
ただ一方で、みんながそうならなくてもいいとも思うんです。最近は、「特別でないといけない」「意識を高くしていなければいけない」みたいな風潮がありますが、そうではなくてもいいのが多様性ですから。「普通である」や「目的や意味をもたない」という選択もまた、その人らしさとして尊重されるべきだと感じます。
- TEXT BY 有馬ゆえ
- PHOTOS BY 河合信幸
- EDIT BY 大村実樹(東京通信社)