常に自分をアップデートし続けるために本を読む。児玉昇司が選ぶ、再読の書3冊


まだ越えられない壁を越えていくために本を読む

私が読書をする意味。それは自分をアップデートするためだと思っています。18歳のときからビジネスを始めて、立ち上げた会社がある程度は成功はするものの、いつもそこには越えられない壁のようなものが現れるんです。その壁を越えて次に行きたい、もっと視野を広げていかなくては、と思ったときに本を手に取っています。

仕事に活かすために本を読むということは、興味のない本も読まなくてはならないこともあるので、ほとんど脅迫観念で読まなければならないと思っていた時期もありました(笑)。

ですが、最近本を読むことについて解き放たれてきたように感じています。これまでは、本の最初から最後まで読まなくてはならないと思い込んでいたのですが、今では、本の中から1行でも自分のためになることがあったら、もはやそれで十分なのではないかと思い始めています。それから読書をすることが楽しくなりましたね。

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今回選んだ3冊に共通するテーマは「思考停止禁止」。

どの本も、ビジネスをし続けるかぎり現れる「壁」を越えていくために、思考し続けていかなければならないときに、ヒントを得られます。

物事は複雑化せずシンプルに考えていく

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「ThinkSimple アップルを生み出す熱狂的哲学」著:ケン・シーガル(NHK出版)

本のタイトルの通り、ビジネスにおいて本当に大事なことは、すごくシンプルだと思うんです。そう考えるようになったのは、これまで私が起業してきた健康食品や英語教材などの通信販売ビジネスで得た経験が元になっています。

これらのビジネスを起業してから、順調に伸びていた売上が落ちてくることがありました。そこで私は、社員がどんなプランを顧客に提案するのか知りたくて、顧客のフリをして、自分の経営している会社に何度か電話をかけてみたのです。すると、私が顧客としてオーダーしている内容は同じなのに、電話対応をするオペレーターによって提案するプランはバラバラだったのです。つまり、この時点でもう複雑化が起きていて、売る側が最適なプランを分かっていなかったのです。

世の中の多様化に伴い、ついたくさんのプランを作ってしまいがちですが、実はコンシューマー向けのビジネスで、私たちが本当にやらなければならないのは一つだけだと思っています。それはユーザーが求めていることだけを提案すること。そういった考えがこの本には的確に書かれています。

実際、顧客に対して提案すべきプランをシンプルに絞るようにしたところ、売上が上がるようになりました。こうした経験から、この本は私の人生のなかで何度も読まなければならない本だと実感しましたね。

人間の不合理な選択にこそビジネスのヒントがある

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「ダニエル・カーネルマン 心理と経済を語る」著:ダニエル・カーネルマン(楽工社)
この本には、人間は合理的に動くものではない、ということが語られていると思います。例えば、自分が進む道として2つ選択肢があるとしたら、険しい道を選んだほうが良いと言われたりしますよね。しかし、現状に変化を起こすということには、悪化する可能性もあります。現状維持を選択すれば、そのようなリスクを負う必要がないと思い込み、そこに居続けようとしてしまう。身近なことだと転職することも同様ですね。変化することが茨の道に思えてしまいがちです。しかし、変化しないことによるリスクも当然あるわけです。これらのことは全て行動経済学につながってきます。

ラクサスは、サブスクリプション方式のビジネスで、顧客にサービスを毎月継続してもらうことが大切なんです。この本を読んで、一つヒントにしたことがあります。当社が提供するサービスは、月額6,800円で始められるのですが、初回で顧客に10,000円分のポイントを付与します。そうすると、2ヶ月目に退会するとき、約3,000円分のポイントを捨てることになり、損をしていると感じます。人間は損をするときのほうが心理的ダメージが大きいため、2ヶ月目に自分でポイントを足して継続し続けようと考える人が多いのです。この「損を回避する」ということに焦点を当てた、ビジネスのヒントはこの本から得ています。

何かを決断しなければならない理由を教えてくれる

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「HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」著:ベン・ホロウィッツ(日経BPマーケティング)

この本は起業家向けの内容ですが、全てのビジネスパーソンにも響く、リーダーシップについて書かれている本だと思っています。

例えば、マネジメントの視点で言えば、部下に対してとても言いにくい話をしなければならないとき、つい逃げ道を探してしまいがちです。この本の中では、言わなければならないことは先に言う、つまり結論として揺るぎないことに関しては先に言いなさい、ということが書かれています。何かを決断するとき、勇気がいりますよね。その決断するための説得力のあるアドバイスを与えてくれているんだと思っています。

もちろん、起業家としてこの本を読んでも得るべきことは多い内容です。この中で書かれている、これから企業を成長させていくなかで起こりうることを、まだ自分は全て経験していないので、想像するだけで震えてきますね......(苦笑)。「一難去ってまた一難」という言葉がありますが、自分が成長していると、必ずその一難は訪れるということだとも思っています。この本を読んでいると、人生に何か起きたときの、ある意味でマニュアルになるとも思っています。

初出:BNL(2020.05.13)

  • TEXT BY 青木真理子(BNL)
  • PHOTOS BY 木村文平