「町医者」のように、地域づくりにかかわる──建設コンサルタント会社キュウメートルの思い

静岡県を中心に建設コンサルティング事業を展開する株式会社キュウメートル(以下、キュウメートル)。「働き方の変革と共に時代の変化にマッチングした街づくりを地域と共に!」をビジョンに掲げ、従来の土木・建築業務にドローンやレーザーなどのICT新技術を活用した三次元解析などを積極的に取り入れた戦略構想を将来の主軸業務と捉えている。

2020年に42歳の若さで代表取締役に就任した望月信助は、キュウメートルの仕事を「町医者のようなもの」だと語る。その言葉にはどんな思いが込められているのか。新体制でこれからの街づくりを問い続けるキュウメートルの思いを、同社初の女性取締役の井上賀奈子と共に、これからの世代によるキュウメートルの「将来像」について聞いた。


静岡県を中心に、地域づくりに関わる

ーー最初に、キュウメートルの事業概要からお聞かせください。

望月信助(以下、望月):地域づくりに関する企画・調査から設計、および工事に必要な設計図書の取りまとめ、そして維持管理まで、トータルにプロデュースを行う総合建設コンサルタントです。おもに、道路、河川整備、防災、上下水道整備・維持に関する土木関連業務と、店舗進展・建替え・修繕、土地整備に関する建築関連業務に携わっています。

業務は具体的に言うと大きく3つあり、一つは設計の基盤となる、土地や建物を測って図面を作成する測量調査。二つめは、ライフラインに必要な道路、上下水道、建物などを、各法令に基づき、経済性、地域特性などの条件を加味したトータルプランニングを行う土木・建築設計。三つめは行政が手がける公共事業をサポートする発注者支援です。静岡県内を中心として活動していますが、災害時などの復興支援などに関わる機会も多いですね。裏方的で陽は当たりませんが、重要なポジションだと考えています。

望月信助
キュウメートル株式会社 代表取締役。地元測量会社に就職4年の修行経験の後、父が創業の現会社に就職。測量、施工管理、営業を経て、2020年より代表就任。

ーーおふたりのこれまでのキャリアと、現在のミッションについても教えてください。

望月:生まれも育ちも静岡で、地元の測量会社で修行をしたあと父が創業したキュウメートルに就職しました。代表に就任したのは2020年なので、現在2期目ですね。

代表就任前はずっと現場で働いていたこともあって、技術の継承や先進技術の提案に力を入れたいと考えています。現在の建築・土木業界は熟練の先輩方がどんどん引退し、人が入れ替わっていく時期。社員の高齢化、若年層の人材不足などの問題がある中、IoT社会への変革に伴う企業としての対応能力を磨いてできることを増やしていかなければ、技術屋として10年後には立ち行かなくなってしまいます。そうした中でこれからのキュウメートルの技術を向上し、若手の意識を改革していくことがミッションです。

井上賀奈子(以下、井上):私は青森県の生まれで、他県で建設会社に就職後、夫の転勤にともない、2008年に入社しました。発注者支援や建築設計を担当後、経営企画室で経営にまつわる経験を積み、2021年4月に取締役に就任しました。

経営についてはもちろんですが、風通しの良い職場づくりや社員のエンゲージメント向上などです。業務の効率的な進め方、情報共有の方法の見直し、個人の能力を生かせる環境……いま会社にとって必要なものをかたちにして、組織を強化していくポジションを担っていると考えています。社員一人ひとりに目を向け、いち早くエラーを察知して、対応とそれに伴うルールづくりをすることにも心がけています。

良い地域づくりのために、利便性よりも大切なこと

ーー静岡という地域に密着して建設コンサルタントを行うことにはどんな特徴がありますか?

望月:私はキュウメートルを「町医者」のようなものだと捉えているんです。設備が整った数百人規模の建設会社を総合病院だとすると、うちは地元の方々を対象にしていて、小さいけれどそのぶん小回りをきかせてなんでも診る。できることはやるし、場合によっては大きなところを紹介することもある。そんな存在だと考えています。

井上:土木を例にお話しさせていただくと、道路を設計する時には地域住民の方から「ここにこういう道路があれば、もっと生活しやすくなるよね」という声が必ず出てきます。道路をつくるのがどういう場所で、どんな不満があるのかは、住んでいる人が一番よく知っているはず。地域に密着することで、地元の方の意見をよく聞いて、一つでも多く事業に反映し、地域貢献ができる会社でありたいと思っています。

私が静岡に来て感じたのは、みなさんとても温厚ですが、そのぶん保守的でもあるということ。地元に昔からある商店街をずっと大事にしよう、という気持ちがとても強いんです。

望月:保守的というのはあるかもしれない。私のまわりの例ですけど、静岡で育った人って、地元に残り続ける人も多いですし。

井上:正直、もう少し新しいことを取り入れてもいいんじゃないかと思うことはあります(笑)。でもだからこそ、地域との関係性をすごく大切にして進めていかないといけないと感じますね。

井上賀奈子
キュウメートル株式会社 取締役。愛知県の建設会社に約10年勤務。夫の転勤に伴い静岡県に転居、2008年にキュウメートル株式会社に入社。建築設計、総合職を経て、今年度より取締役就任。

望月:そうですね。信頼関係の上に成り立つ仕事だと思います。市街地からキュウメートルに来る途中、すごく細くて曲がりくねった道があるのですが、そこは遺跡(高尾山古墳)があって迂回しているんですよ。不便だけど、遺跡を保護することを優先している。ひと昔前の土木や建築は自然を切り開いていたけど、最近は環境や文化財と共存するものに変わってきました。

利便性だけを考えれば、幅の広い道路をまっすぐ通せばいいかもしれませんが、良い街をつくるのに必要なのはそれだけじゃありません。通学路が近くにあるなら広い道路は車の速度が上がって事故の危険性も高まるから、わざと細くしたり、敢えてカーブさせたりするということもあります。そうして地元の人の暮らしや、大切にしたいものを取り入れられるのが特徴ですね。

ーー現在、日本の地方は人口減少や一次産業の衰退など、様々な課題を抱えています。その中で、キュウメートルにできることは何でしょうか?

望月:私たちの手がける建築物や道路は、地域の人が日々利用するものです。多くは高度経済成長期につくられていますが、中には完成から何十年も経ってそろそろ限界を迎えつつあるものも。リノベーションやリフォームで修繕して使うのか、新しく建てるのかを判断する必要があります。

私たちの顧客は国交省や静岡県、市町などの行政である場合が多い。公共事業は税金を使って、安全・安心かつ利便性の高い、道路、河川砂防、防災の事業や建物をつくる必要があります。建設コンサルタントとして、事業目的、地域特性を踏まえた「コストと安全性」に配慮したアドバイスを心がけています。その仕事は、人口減少などを抱える地域への貢献にもつながっていると考えていますね。

地元の声に寄り添い、届けるために

ーー建設コンサルタントの仕事は、どのような流れで進めていくのでしょうか?

望月:まずはお客様からそこにどんな建物をつくりたいかの希望を聞き、求めているものが実現できるかを調査します。次が、法令や規制に基づいた土木設計や建築設計。どんなものなら実現可能か、予算も含めてお客様とキャッチボールしながら基本プランを作成し、その後、工事に必要な設計図書類(設計書、設計図など)を作成します。

そのあとは、設計図書類を基に施工を行うのですが、キュウメートルでは担当しないため、着工後は図面通りに工事が行われているかなど、施工管理として関わります。また、完成後の建物の登記や引き渡し、点検も行うことが多いですね。

ーーいろいろな人や会社と関わりながらの業務になるんですね。

望月:そうですね。一人でできる仕事ではありません。最初の測量や調査も2〜3人で行いますし、設計も一人が全部の知識とスキルを持っているわけではないので、得意なものを分担しながら進めることになります。

井上:外部の顧客などとも継続して関わっていきます。多いのは国交省などの行政ですが、同業者や建設会社などと連携することあります。

望月:バトンを渡したり、渡されたりですね。

井上:今は部分的に担当することが多いですが、今後は、施工を除き、1から10まですべてを弊社にお任せください、と自信を持って言えるような会社にしていけたらと思っております。その体制を、この先の5年、10年をかけてつくっていきたいですね。

ーー地域住民や行政の方、同業者など様々な人と関わる中では、どんな能力が大切ですか?

望月:一番大切なのはコミュニケーション能力です。たとえば行政の方とお仕事をする場合、担当者が転勤になることも多く、「前任は優しい人だったけど今度は少し気難しい人だぞ」なんてことも。いろいろな人とうまく付き合っていくためには、対話する力が必要だと感じています。顧客が、何を求めているのか、何が目的なのかを理解することが重要です。土木・建築の知識や技術も当然必要になりますが、その技術を提案するのもコミュニケーションから始まるわけです。

井上:それから、行政の方は地元の人とは限らないんですよね。地域の事情を把握していない人に地元の声を届けるためには、日頃からしっかり耳を傾け、わかりやすく図面や数値で示す能力、つまり見える化も必要なアイテムになります。

地元住民からの要望を行政に働きかけ、具現化していくことも、町医者的な仕事の一つだと感じますが、望月が入社当初から非常に力を入れている部分かと思っています。

望月:そんなに大それたことはしていないと思うけどね(笑)。それに、今はどんな建設事業でも地元の声を聞き、「スピード感を持っての具現化」がこれまで以上に大切になってきていますから。

新規開発の説明会を開くと、いきなりすごい剣幕で来る人も中にはいます。ただ、そういう人にもきちんと納得してもらって事業を進めていかないといけない。そのためには気持ちに寄り添って、丁寧に過去の事例をお話しするコミュニケーションが大切です。こうした進め方も町医者的といえるのかもしれません。

地元の声を届けるためには、日頃からしっかり耳を傾け、わかりやすく図面や数値で示す。こうしたコミュニケーションの一つひとつを大切にする、それが「町医者」的に地域づくり関わるキュウメートルの矜持なのだ。

形になり、地図に残る仕事

ーーでは、この仕事のやりがいと難しさについても教えてください。

望月:やりがいはやっぱり形に残ることですよね。大きく地図に載るわけじゃなくても、完成して誰かが使ってくれているのを見るのはうれしいです。

井上:この業界の人はきっとみんなそうだと思いますよ。私は建物や道路を使っている人を見た時に達成感とやりがいを感じますし、「この建物、俺がつくったんだよ!」と言うのがうれしい人はたくさんいます。

望月:難しいのは、人命にかかわることなので、つくったものが本当に大丈夫か、不安を抱え続ける仕事でもあるということでしょうか。万が一何かを間違えていたらとか、大災害に耐えられるのかとか、つい考えてしまいますね。その不安はミスが起きた時や、つくったものが長い年月をかけて役割を終える時まで解消されないので、常につきまとうものだと思いますが。

ーーその不安は仕事に「責任」を持っているからこそではないでしょうか?

望月:そうかもしれませんね。ほかには、一つの事業を進める上でも、地域特性や事業内容に基づく指針などの考え方やアプローチがさまざまですし、場所や建造物によって基準や法律も違うので、何をどう進めるかが難しい、ということもあります。こうした知識は一足飛びに身につけられるものではなく、「経験工学」的なところが大いにあります。そのあたりが大変なことかもしれない。

ーーいろいろな経験を地道に積んで、地盤を固めていくのが重要な仕事なのだと感じました。では、おふたりが仕事をする上で大切にしている、「働くこと」の軸を教えてください。

望月:社員が長く働けて、その家族含めて幸せでいられる会社にしたいと思っていますね。売り上げや利益も大切ですけど、一度しかない人生、つまらないよりは充実したビジネスライフの方がいいじゃないですか(笑)。

代表取締役に就任して1年。「働くことが生きがいになるような、やってよかったと思える仕事をつくりたい」と望月は真っ直ぐに語る。

井上:仕事をしていて苦しい時や悩む時もたくさんあるので、時々「それでもこの会社にいるのはどうしてだろう……」と自問自答するんです。そのたび思うのは、結局はつくるのが好きなんだということ。ものというより、会社という組織や、社員や誰かのやりがいをつくるのが私は好きなんです。今、ひとつずつ積み重ねている改革が、必ず会社のため、社員のため、地域のためになると強い信念を持ち続けています。

会社の売り上げが今の倍になるよりも、社員からたった一言、「この仕事ができてすごくよかったです、いい経験になりました」と言われるほうが、私はうれしいですね。

望月:仕事で悩むこともくじけることもあると思うけど、働くことが生きがいになるような、やっていてよかったと思える仕事を作りたいよね。それは私も同じです。

井上:望月も情の人なんですよ。まず利益を追求しないといけない立場ではありますが、「社員にいい経験をさせたい」という気持ちを誰よりも強く持っていると思います。

時代に合わせ、180度変える部分があっていい

ーーこれからキュウメートルを成長させていくにあたり、どんな人とともに働きたいですか?

望月:私は熱意がある人と働きたいですね。今は私や井上が会社の体制を作り変えようとしているところなので、新しい提案も取り入れやすいと思います。キュウメートルは設計やプランニングが中心ですが、施工側から転職してきた人もいて、個性豊かです。

井上:よく言えばみんな素直でまじめなメンバーです。ただ、新しいものへの好奇心や自主性は、もっとあってもいいのにと思うことがあります。向上心があって自分を高めていきたいと考えている人、学びたい意思が強い人に入っていただくことで、社内の雰囲気が変わるのを期待しています。

何かをつくることに興味があってバイタリティがある人であれば、年齢を問わず一緒に仕事をしてみたいですね。

俯瞰した視点でものごとを見つめる井上は、望月の良き相棒とでも言うべき存在。「会社という組織や、誰かのやりがいをつくるのが好き」と情熱的な面をのぞかせる。

ーー最後に、おふたりが描くキュウメートルの展望を教えてください。

井上:目指すは地元の建設コンサルタントで一番信頼してもらえる会社です。そのためには社員の教育にもっと力を入れ、会社の体制も変革・強化していかないといけない。世代が変わって旧体制をゼロから見直していくのが今のキュウメートルのフェーズです。

これまで培ってきたものもたくさんありますが、極端な話、180度変えるところがあってもいいと思っています。常に今の時代に必要なものを考えて、その時代に沿った対応、その先を見据えた対応ができる建設コンサルタントを目指したいですね。

望月:私たちがいい仕事を続けることで、「ここに話を聞けばなんとかしてくれる」「困ったらここに聞いてみよう」と思ってもらえる存在になったらうれしいですね。地域住民や行政などの顧客にとって、信頼できるパートナーでありたいです。

井上も言う通り、今は世代の入れ替わりの時期。変化の激しい時代に長く続いていく組織であるために、しっかりとした基盤を作っていきたいです。そのためには格好いい大それたことを掲げるというより、基本に立ち戻ってコツコツやるのが大切だと考えています。

旧体制をゼロから作っていくのが今のキュウメートルのフェーズ。変化の激しい時代に、長く続いていく組織の基盤を構築する仲間を求めている。

  • TEXT BY 小沼理
  • PHOTOS BY 安井信介
  • EDIT BY 瀬尾陽(Eight Career Design)

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