「人の目が変わる」瞬間に組織変革ははじまる──共創型戦略デザインファームBIOTOPEが導く「創りたい」未来像

NTTコミュニケーションズやKDDI、NHKなどさまざまな企業の組織変革やビジョン策定、デザインリサーチなどを手がけ、デザインを軸とした価値創造を行っている共創型戦略デザインファーム、株式会社BIOTOPE(以下、BIOTOPE)。そこで働くのは、それぞれ異なる職能を持ったプロフェッショナルだ。同社の石原龍太郎、永井結子、白濱雄太の三名から伺う、キャリア観や働き方を通して、BIOTOPEが企業に提供する価値と、その先にある未来像を明らかにしたい。


さまざまな職能を持った人々が集まるチーム

――まずは皆さんの入社経緯からお聞かせいただけますか。

白濱雄太(以下、白濱):きっかけは『ティール組織』(著: フレデリック・ラルー)だったんです。当時就活中で、企業に迷っていたところ、『ティール組織』の推薦文に佐宗(佐宗邦威、株式会社BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジック・デザイナー)の名を見つけて。まず、このような次世代の組織が世界では出てきているのかと感心したのと同時に、「次世代の組織をテーマにした本に推薦文を書く日本人ってどんな人だろう」と興味を持ったのが、BIOTOPEを知るきっかけでした。就活を同時並行させながら、大学4年生の夏からインターンとして働くことになって、他に内定をもらった会社もあったのですが、卒業のタイミングでそのままBIOTOPEで働くことを選びました。

白濱雄太
Organization Developer。学生時代、就活支援に従事し多くの就活生と関わる中で、自分らしく生きることと社会で生きることのギャップに苦悩する学生の多さに課題感を抱き、自分らしく創造的に生きられる人、組織づくりを志す。 BIOTOPE入社後、人や組織が在りたい姿、創りたい未来に向かって自律的に行動を起こしていく「自律創造型組織」への変革支援をテーマに、幅広い業界に対する新規事業づくりや理念策定・浸透のプロジェクトに従事。 人や組織の持つストーリー、想いを起点とした強い意志の込もったMission/Vision策定、浸透が強み。

永井結子(以下、永井):私もはじめはインターンでした。BIOTOPEが設立されて数カ月経った頃、佐宗さんが「デザイン作業ができるインターンを探している」と、当時私が所属していたゼミの先生に声をかけたのがきっかけです。卒業後はロフトワークでクリエイティブディレクターとして働いて、その後、フリーとして独立することにしたのですが、しばらくしてから佐宗さんに声をかけていただいて。今は業務委託のパートナーとして、デザインの仕事を中心に週3で働いています。

石原龍太郎(以下、石原):僕は新卒でDeNAに入社した後、Forbes JAPANで3年半ほど働きました。Forbesでは雑誌やウェブだけでなく、イベントに携わらせてもらったのもやりがいがありましたね。たとえばですが、「自動車メーカーのイベントに科学者を読んでみよう」とか、まったく接点がなさそうなものをつなげて、新たな価値を生み出すのも広義の編集だな、と。

ただ、30歳を前にしてキャリアを考えると、ずっと出版業界で生きていくイメージが持てなくて。編集としてより広い領域を手がけるにはどうすればいいんだろうと考えていたとき、佐宗さんがTwitterでメンバーを募集していたんです。以前から何度か取材させてもらっていましたし、自分でもまだ言語化しきれていない編集の可能性を理解していただけると思っていました。それで「お話聞かせてもらえませんか」とアプローチして、2020年12月に入社することになりました。

――白濱さんと石原さんが正社員で、永井さんが業務委託。契約形態も役職もバラバラですし、それぞれ異なる背景を持った方々がチームとして集まっているんですね。

白濱:僕は組織人事系の仕事も多く、採用面接も担当しているのですが、そのときに考えるのは、「その人がBIOTOPEに入ることで、どんな新しい仕事を共に作っていけるか」ということ。石原さんが入社したときもそんな感じで、企業のミッション・ビジョン・バリューを創り、いかにそれを浸透させていくかを考えたとき、編集の力や可能性を感じて、入社していただいたんですよね。募集要項を出して、それに合う人を探すというより、その人の持っている強みから、社会にとって意義があると思える仕事が生まれていくような感じなんです。

「やってみたい」からはじまるプロジェクト

――BIOTOPEはさまざまな企業の戦略デザインを手がけていますが、企業はどういった課題を抱えているのでしょうか。

石原:「企業の10年後のビジョンをつくりたい」「新規事業の価値を社内外に対して適切に伝えるためのコミュニケーション戦略を考えたい」……さまざまな目的がありますが、その背景にあるのは、あらゆるものがコモディティ化・均質化しているなかで、企業やそこで働く人自身が確固たるアイデンティティを持ちたいという考え方だと思います。

白濱:コロナ禍で、改めて「組織」の在り方に立ち返る機運が高まっているのもありますね。存在意義や“芯”を持つために、事業の方向性や企業の哲学、行動指針などを作っていきたいという相談が増えています。

永井:佐宗さんはよく「北極星を見つける」と言っていますね。企業やそこで働くみなさんの意識や考え方、内外から見える価値を探し出し、進むべき方向性をたどれるように、私たちが北極星探しや道づくりのお手伝いをする感覚です。そういう意味では、何か明確にやりたいことが決まっているというより、「どうしたらいいんでしょうか」という粒度で、相談いただくことも多いです。

永井結子
Communication Designer / Contextual Designer。株式会社ロフトワークにクリエイティブディレクターとして従事。その後、グラフィックレコーダー/イラストレーターとして独立。さまざまなステークホルダーの交わるビジネスシーンにおいて想いや背景の文脈、情報構造をグラフィックを用いて可視化し、議論の活性化やメッセージの浸透など、コミュニケーションを円滑にするための情報設計と情報デザインを行う。

白濱:テンプレートがないので、けっこう大変なんですよ(笑)。企業によって、その都度カスタマイズでやっています。

永井:だから私たちのスタンスとしても、「まずは一緒にやってみましょう」とプロジェクトに併走することが多いんです。

――プロジェクトはどのようにスタートするのですか。

白濱:毎週ミーティングを行っているのですが、「こんな相談が来てるけど、だれか興味ある人はいる?」「この人が担当するなら、こんなプロジェクトにできるんじゃないか」と、まずは社内の状況を見ながら、興味のある人が手を挙げます。それから詳しい話を聞きに行って、プロジェクトの方向性を決めて、実際に担当するメンバーを集めてチームを編成します。「いま、キャパどんな感じですか?」と呼びかけて(笑)。

石原:でも基本的には、キャパシティに余裕があるからといって、BIOTOPEとしてやる意義をあまり感じられないようなプロジェクトはやりません。社会的意義があるなら採算度外視でやることもありますし、メンバーの興味関心が強ければ迷いなくやります。

永井:キャパシティがいっぱいでも、どうしてもそのプロジェクトをやりたい場合、他の人がサポートに入ったり、その人がいちばんパフォーマンスできる道を探したりするのが、組織としての文化ですね。

――会社によっては、売上を優先して案件を引き受けることもあると思うのですが、あくまでメンバーの意向を優先させて、「やってみたい」という気持ちを大切にするのは興味深いですね。

石原:メンバーが常に会社の方向性やプライオリティをきちんと把握できているからこそ、そういった意思決定ができるのだと思います。「既に目標達成は見えているから、積極的に案件は受けず少し休む期間に充てたり、社内の体制を整えていこう」「今後のプロジェクトを見据えてケイパビリティ開発をするのもアリだね」といった会話を普段からみんなで行っているんです。

石原龍太郎
Editor / Trend Researcher。学生時代より出版社でのインターンやライターとしてカルチャー・ライフスタイル誌などで執筆。新卒でDeNAに入社後、経済誌「Forbes JAPAN」にて編集者として勤務。各領域で活躍する30歳未満の30人を選出する「30 UNDER 30 JAPAN」特集や、オフィス家具メーカーのオカムラと共に働き方の未来を考える雑誌「WORK MILL」などの企画・特集を主に担当。異なる文脈や思想をつなぎ合わせて新たな価値を生み出す「編集」の視点から、コミュニケーションデザイン、ブランディング、ビジョンストーリー策定などを行う。

永井:それぞれ異なるバックボーンを持っているので、誰かしらが手を挙げてくれるんですよね。私には難しいかな、と思うようなプロジェクトでも、「最近その業界に興味あるんですよ」と誰かが手を挙げる。守備範囲が広いんです。

石原:もちろん、リソースは限られているから、自分と相談しつつなんですが(笑)。

白濱:この前も、誰も手を挙げなかったプロジェクトがあって、個人的にはやりたいなと思いつつ、キャパ的に厳しいかなと一度はあきらめたのですが、会議の最後に「……やっぱり、話を聞きに行ってもいいですか?」とひっくり返して(笑)。実際に企業の方に会ってみたら、手を挙げて良かったなと思いましたね。

――そんなふうに仕事を前向きに捉えられるのは、とても理想的ですね。

石原:みんな、「文字通り」に受け取らないというか。面白そうにアレンジするのが得意な人たちが多いんですよ。

白濱:単に「ビジョンを創る」じゃなくて、「次世代の子どもたちにどんな未来を残したいか」と言われると、やりたくなりますよね(笑)。

異なる組織文化の人々が、ともに目指せるビジョンを

――BIOTOPEが手がけた具体事例についてお伺いします。参天製薬株式会社(以下 Santen)、NPO 法人日本ブラインドサッカー協会(以下、JBFA)、一般財団法人インターナショナル・ブラインドフットボール・ファウンデーション(以下、IBF Foundation)の三者が10 年間の長期パートナーシップ契約を締結するにあたり、BIOTOPEがビジョン策定に携わったそうですね。

白濱:きっかけは、Santenが2017年からブラインドサッカー(以下、ブラサカ)を支援しはじめたことでした。Santenは点眼薬など眼科医療を手がける企業。けれども患者の目が見えなくなってしまうと、「医療」ではなく「介護」の領域になり、失明した人への支援は十分にできていなかったんです。Santenとしては、医療の領域から離れても何かしらの形で支援し、晴眼者と視覚障害者が当たり前に混じり合って、ともに暮らしている世界を実現したいという思いがありました。

ちょうど2020年はSantenの創業130年にあたり、新たに「Santen 2030」という長期ビジョンを掲げたタイミングでもありました。それを達成するための戦略として挙げている一つが、「Inclusion - 視覚障がいの有無に関わらず交じり合い・いきいきと共生する社会の実現」というものです。その具体的な活動の一環として、Santen代表取締役社長兼CEOの谷内樹生さんと、JBFA専務理事兼事務局長でIBF Foundation代表理事の松崎英吾さんが話をするなかで、長期パートナーシップを結ぶことが決まったそうです。

ただ、スポンサーシップではなく10年という長期パートナーシップですから、今後のパートナーシップの拠りどころとなる骨太な大義を見いだす必要がありました。それで、BIOTOPEがそのサポートをすることになったんです。

――どんなプロセスでビジョンを策定していったのでしょうか。

白濱:プロジェクトのスタートが一度目の緊急事態宣言下だったということもあって、4回にわたるワークショップをすべてリモートで行うことになりました。初回は各団体のプロジェクトのコアメンバーで、それぞれがなぜ「目」の領域に関わっているのか、バックグラウンドを見つめ直し、このパートナーシップを通じて創りたい未来を考えてもらいました。

永井:私は議論やアイデアを可視化するグラフィッカーとしてワークショップに入ったのですが、イメージをその場で可視化すると、どんな未来を創りたいのか、理解を深めることができるんです。みなさん、何らかの原体験をお持ちだったんですよね。家族に視覚障害者の方がいたり、ご自身が病気になって初めて気づくことがあったり……原体験を通じた現状改善のための強い意志を持つ方が多くいらっしゃいました。

白濱:第2回からは、新たな参加者も加わり、目にまつわる社会課題を洗い出しながら、その背景にある構造は何なのか、実際に視覚障害者の方にもヒアリングを行い、構造的に課題を可視化。第3回でその課題に対して三者が何に取り組めるのか、それぞれアイデアを出し合って、自分たちのできることを具体的に考えていきました。最終回では、これまで話してきたことに時間軸をふまえてまとめ、戦略を作ることで、この三者だからこそ創ることのできる未来へのストーリーを明確にし、ビジョンを策定しました。

――通常のワークショップなら、同じ場で熱量を共有することにも意味があると思いますが、リモートとなると勝手が違うのでは?

永井:おっしゃる通り、急遽リモートで行うことになりました。フルリモートのワークショップは私たちとしてもはじめてのことで、私はデザイナーとしてオンラインのコミュニケーションツールやデザインツールを調べて、いかにアイデアを可視化できるか、デザインの視点からワークショップをサポートすることになりました。

今でこそ多くの方が、オンラインでのやり取りにも慣れていらっしゃいますが、はじめのうちは、お互いに関係性が築けていないこともあって、空気感の醸成が難しかったですね。パートナーシップと言っても、まだ関係性ができあがる前でしたから、私たちがあいだに入ることでフラットな空気が生まれて、少しずつお互いに熱量を出せるようになっていきました。

白濱:はじめは目線合わせを丁寧に行いました。なぜスポーツなのか、なぜブラサカなのか……と。ブラサカに関わっている方々は、視覚障害者の方と接する機会も多いので、「現場感覚」があるのですが、Santenにはブラサカに詳しくない方もいましたし、どうしても現場の感覚がすり合わないというか。一方で、現場を知っているJBFAとIBF Foundationのブラサカ側も、始めは遠慮が出てしまい、なんとなく議論がふわっとしてしまう。お互いがどんな立場から目という領域に関わっているのか、それが掛け合わさることでどんな可能性があるのかを少しずつすり合わせることで、参加者のプロジェクトへの向き合い方が少しずつ変わっていったと感じます。

――かたや大企業で、もう一方はNPOや一般財団法人。勤めている方の雰囲気も違いますよね。

白濱:そうなんです。ブラサカ側はSantenと比べると組織としても少人数でフットワークが軽い。一方Santenは、規模も大きく、医療に関わる業界ということもあり意思決定プロセスもしっかりしています。風土としては大きく違う人たちが同じ船に乗って、10年ものパートナーシップを結ぼうとすると、摩擦が生じるのも無理もありません。

でも当初から、JBFA事務局長でIBF Foundation代表理事の松崎さんから言われていたのが、「健全になんでも言い合える関係になりたい」と。そういった意味では、僕らがあいだに入って支援させてもらったことでそうした関係の土台が築かれていったのは、大きな意義だったと思います。

スポンサーシップではなく10年という長期パートナーシップ、摩擦が生じることは必然とも言える。三者だからこそ創ることのできる未来を、対話のなかから明確にして、ビジョンを策定していった。

永井:ビジョンストーリーを考える際、言葉ひとつとっても、「この言い方はよくない」と、何時間も議論することもありました。強い思いを持ったチームになりましたね。

白濱:「当事者に聞かなきゃわからないんじゃないか」と、実際にストーリーを視覚障害者の方に読みあげて聞いていただいて、何か違和感がないかチェックしてもらうこともありました。

――そうやって生まれたのが、このイラストによるビジョンなんですね。

BIOTOPEが作成したビジョンイラスト。「“見える”と“見えない”の壁を溶かし、社会を誰もが活躍できる舞台にする。」という共通ビジョンの元、「共体験でそれぞれの個性や強みを理解する」「見えるに関するイノベーションを創出する」「視覚障がい者の QOL を向上する」という3つのゴールを設定した。

永井:それまでの議論の文脈を踏まえて、お互いのパートナーシップ……視覚障害者と晴眼者がひとつになった世界はどういったものだろうと、イラストレーションとして具現化していきました。難しい課題だからこそ、共有できるビジュアルを差し出すことで、お互いがその解釈をやり取りできるようになったのが良いところだったなと思います。

白濱:ワークショップごとに議論された内容をグラレコに落とし込んで、議論をすり合わせながら進めていったのは、大きな価値だったと思います。医療と介護、それぞれ異なる視点で議論をすると、解釈にも幅があるんですよね。言葉だけだと、同じ言葉でも違うものに思えるけど、絵を見ながら議論することで、それぞれがどの立ち位置からどこを目指そうとしているのかが見えた。具体的なビジョンを絵として共有できていたからこそ、意味のある議論ができたのだと思います。

企業を、そして社会を変えるために

――みなさんにとって、仕事の醍醐味を感じられるのはどんなときですか。

白濱:これは、BIOTOPEで働いていて何度かあるのですが、「人の目が変わる瞬間」を目の当たりにすることがあります。もともと個人的には組織・人材開発に興味があったのですが、事業や会社の未来を作るプロセスの中で人が変わるのは衝撃的な体験でした。

インターンだった頃、あるプロジェクトの参加者に「創造的な文化の種が蒔かれた気がします!」と言っていただいたことは大きな原体験になっています。

石原:とある組織変革のプロジェクトで、どちらかと言うと変わっていくことに抵抗感を示していた方が、ある瞬間に姿勢がガラリと変わり、表情や発言が大きく変化したことがありました。そこから、まるで新しい風が吹き込んだように、より一層意思を込めながら未来の自分たちの姿を考えられるようになったんです。

そのとき、はじめて鳥肌が立ちました。「あぁ、こうやって組織は変わっていくんだな」と。そう思うと、やりがいというか、嬉しさを感じましたね。

「人の目が変わる瞬間」を目の当たりにする、そこには得も言われぬ仕事の醍醐味がある。

永井:私の場合、その変化をビジュアライズできるのが、BIOTOPEで働くデザイナーの強みだと思っています。グラフィック領域のデザイナーやイラストレーターは、一般的に社外のユーザーに企業のメッセージやコンセプトをアウトプットを通じて伝えていく仕事ですが、BIOTOPEのプロジェクトでは議論の中で「今その場で生まれた価値」を、より次の議論につなげるために可視化して提供している。グラレコで描いたものは、私も会議後にクシャクシャっと丸めて捨ててしまうくらい、本来的にはその場でしか価値のないものもあります。

ブラサカのプロジェクトでも、たとえばフィールドを上から見るか地平線に沿って見るか、感じ取り方はまったく違います。それをイラストとしてビジュアライズして、みなさんがイラストを見ながら対話を繰り返し、ビジョンが固まっていく瞬間を支援できるのは、すごく楽しいことですね。

――ビジョン策定には、完成形だけでなくそのプロセスを共有することに意味があるんですね。その過程にBIOTOPEが併走することで、みなさんの職能が生かされている。

永井:ブラサカのように、ビジュアルや言葉として生まれたものを世に出すところまで提案することもあれば、「どうしたらいいですか」と、まだ何もないところからお話しすることもあります。そんなふうに上流から下流工程まで広く関われるデザインの仕事って、なかなかないと思います。私自身、自分の肩書きを説明するのが難しいんですけど、今の時代だからこそ求められている役割だなと感じています。

石原:僕もまだ「デザインコンサルティングファームにおけるエディターの仕事」を模索している段階です。でもやっているのは、「それってつまりこれですよね?」を的確に差し出すような仕事。そこに自分の価値を発揮できる余地があるんだと考えています。たとえば、100枚くらいのスライドをA4一枚にまとめるにしても、その企業の目的を考えて、どんなストーリーテリングで、どんな要素をどう配置するかを考えるのも、編集の役割。プロジェクトのなかで、クライアントの企業とはまったく違う領域の専門家をアサインしてインタビューを行うことで、ハッとするような知見やブレークスルーを得られる瞬間を生み出すのも、編集の役割なんです。

白濱:そして実際にビジョンを浸透させていくためには、環境が変わっていくことも大切です。ブラサカではビジョンと3つのゴール、イラスト以外に、具体的なKPIも設定したんです。「晴眼者の無意識バイアス度合いが下がる」「視覚障害者が世の中のあらゆるサービスにアクセスしやすくなる」「視覚障害者の職域の幅の数を増やす」というもの。ビジョンを策定するだけでなく、そこに向かって行動していける仕組みや環境づくりまで、支援していけたらと考えています。

――最後に、みなさんはこれから、BIOTOPEでどのようにキャリアを重ねていきたいですか。

永井:日本ではいまだトップダウンな組織が多く、個人の思いや社会との接続が優先されることはあまりありません。けれども、プロジェクトでデザイン的なアプローチをしながら、さまざまな人と対話していると、一人ひとりが本当に感じているビジョンを引き出せる瞬間があるんです。そんなときにデザインの力を感じますし、ビジネスシーンでもデザインを活かせることがまだまだたくさんあるなと思います。ミッションやビジョンをナラティブとして捉え、ビジュアライズだけでなくテクスチュアル(文章的)なところまでデザインできたらと考えています。それを具現化するためのスキルを磨いていきたいですし、プロジェクトのなかでデザイナーとしての視点からもっとアイデアを提示していきたいですね。

一人ひとりが本当に感じている思いを引き出せる力が、デザインにはある。ビジュアライズだけでなくテクスチュアルのところまで捉えてデザインしていきたい。

白濱:今はミッション・ビジョン・バリューをつくるまでに関わることが多いのですが、その先の工程にも関わっていけたらと考えています。たとえば、会社のミッションやビジョンが変わっても、現場のKPIが変わらないから、結局社員も変わることができない、ということは往々にして起こり得ます。「言行一致させる」って、そう簡単なことではありませんが、その企業で働く人々が実際に変わっていけるような仕組みまでデザインできたら、それが実現するのではないか、と。

石原:環境問題や人種差別、ジェンダーギャップなどさまざまな社会課題が話題になっていますが、それらはビジネスとも無縁の話ではないと考えています。たとえば、2020年にサンフランシスコで頻発した山火事と、日本で暮らす僕らが毎日飲んでいる飲料水とを、丁寧に紡いでいけば必ずどこかでつながるような気がするんです。

SNSで社会問題に対する声があがって、物事が動くこともありますが、資金も影響力も持っている企業が変われば、もっとドラスティックな変化が起こるはず。未来に向けた探索を続けながら、企業に対して、組織開発やビジョン策定にとどまらず、企業のあり方が変わるような提案ができれば。そのための発信を、この小さなオフィスから続けていきたいですし、その先に実感の持てる変化を起こせたらいいなと考えています。

ビジョン策定や組織開発にとどまらず、企業のあり方が変わるような「その先」の提案から、社会に変化を促していくBIOTOPEの探索は続く。

  • TEXT BY 大矢幸世
  • PHOTOS BY 寺島由里佳
  • EDIT BY 瀬尾陽(Eight Career Design)

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